この溺愛にはワケがある!?

昼ドラ女

今日は十二月第三週目の金曜日。
朝、デスクのカレンダーをチェックすると大安の文字が見え、美織はがっくりと項垂れた。
大安の日は婚姻届や転居など様々な届け出を出す人が多くなる。
つまり、より忙しくなるのだ。
当然、世間では仏滅より大安の方がいいに決まってる。
迷信もいいとこだと思うが、仏滅に婚姻届を出して離婚なんてすれば、それ見たことかと言われるのだ。
だが統計的に見て、きっと仏滅でも大安でも離婚する数字はそんなに変わらないだろうと美織は思っている。

案の定、午前中は婚姻届や転入、転出、転居届を出す人が多かった。
取り立てて込み入った案件もなく、人は多いが面倒な人はいない。
美織はそつなく業務をこなし昼休みに入った。

昼当番は芳子と亮二。
美織は寧々と共に休憩室に向かいお弁当を広げた。

(あ、搭乗前に連絡するって言ってた!)

美織が急いでスマホをチェックすると、メッセージが何件か入っていた。

『飛行機間に合ったよ。おにぎりも食った。ありがとう。何かお土産買って帰るから。リクエストある?』

とのメッセージの後に、とぼけたネコが大きなハートを持った画像がついている。

一体どんな顔でこれを……と、考えて美織は頬を緩めた。

「くふふ、らぶらぶぅ!!美織さんの顔、ユルユルですよぉ??」

寧々はここぞとばかりに美織をからかった。
確かに美織の顔はほんのりとばら色で、だらしなくなっているのだと思う。
それは本人が一番良くわかっていた。

「木ノ下さん?お黙りっ!!」

「えーー?いいじゃないですかぁ!幸せなのはいいことですよ!私もお裾分けされたいです。ついでに有馬さんからプロポーズされたいですっ!!」

「ついでって……どうなのよ。それでいいの?」

寧々はいただきますっと手を合わせ、ウィンナーを口に放り込みつつ、怒ったように言った。

「昨日、言ったんです。黒田さんと美織さん結婚するんだってー、いいなぁって。そしたらですね、へぇーと一言……どうなんですかね?有馬さん、私と結婚する気あるんでしょうか!?」

更にブロッコリーを口に放り込み乱暴に咀嚼する。
寧々はかなりご立腹のようだ。

「う、うーん。どうだろう。私にはわかんないや。やっぱりこういうことは、福島先生に聞かないと……」

「美織さんはいいですね!!だって黒田さん、もう結婚前提で話を進めてたんでしょ?わかりやすくていいですよ!私達なんか……これからどうなるかもわからないんですから……」
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