この溺愛にはワケがある!?
二人の会話にもうたまらんとばかりに寧々が参入する。

「ちょっと!私にも詳しく教えてくれませんか!?……あっ……そうか、わかっちゃった!高そうなスーツの女………黒田さんの元カノに逆恨みされたんでしょ?」

さすが寧々。
というか美織が鈍いだけで、寧々の感覚は普通なのかもしれない。
芳子と美織は何も言わずに頷いた。

「きっとあれですね、有馬さんの言ってた結婚するはずだった女」

寧々はピッと人差し指を立て芳子を見、

「あれと結婚しようと思うなんて、黒田さんも懐が深いわね」

芳子はイヤミを言いつつ顔をしかめた。

美織は二人の会話を聞いて思い出したことがあった。
見合いの次の日、喫茶店で隆政に結婚する予定だった彼女の話を聞いたことがある。
その時確か『彼女の方にいろいろ問題があって別れた』と話していた、と思う。
いろいろあった問題ってなんだろう。
美織は早く解放されたいため、その話を詳しく聞かなかった。
まさかこんなところでそれが裏目に出るなんて誰が予想するだろう。
美織は恐る恐るそれを口にした。

「前に隆政さんが、向こうにいろいろ問題があって別れたとか言ってたんだけど……」

「と、なると……やっぱり大谷不動産が有力ね」

と芳子が言った。

「大谷不動産。あの良くない噂のとこですね?そんなのと結婚しようと??」

「最初は知らなかったのかもね。で、孫の相手を御大が調べて、それで別れさせた。まぁ、黒田さんも好きでもなんでも無かったんでしょうね?でも相手にしてみれば、日本有数の企業の御曹司を手に入れられるチャンスが無くなった。もうそこまで来ていた幸運をつかみ損ねた。それを加藤さんのせいにするのは……ありえなくないわね。ま、私の推測よ、あくまでも」

寧々と芳子の会話を聞きながら、美織はいろいろ考えている。
あくまでも推測、でもそれは真実のような気がしていた。
大谷静は美織を『泥棒猫』と呼んだし、恐ろしいくらいに恨んでいた。
覚えておけ、とも言った。
脅迫だ。

…………あれ?これは………警察案件なのでは!?
咄嗟のことで気付かなかった美織は、頬の腫れと脅迫でこれが犯罪だと今やっと把握した。
だが……隆政からの返答もないまま、警察に連絡していいものか。
何が良くて悪いのか、美織は今判断することが出来なかった。
そして俯く美織の様子を見た二人も同様に途方にくれていた。
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