この溺愛にはワケがある!?
一通り笑い終え美織は雑炊をよそった。
冷蔵庫から酢の物と漬物、作り置きのポテトサラダも出しテーブルの上に置く。

「どうぞ?熱いから気をつけて」

「うん。頂きます」

漸くコートを脱ぎ、いつものように美織の向かいに座って手を合わせる。
育ちの良い隆政はとてもきれいに箸を持つ。
向かいあって座りながら美織はいつもその手元を見ていた。
酢の物を一口、雑炊を二口、その口に運ぶと彼の窶れた顔に生気が戻ってくる。
これでやっと話し合いになりそうだと、美織は口を開いた。

「今日の件なんだけど………ああ、食べながら聞いて」

箸を置きかけた隆政に美織は言った。

「あのね、そもそも山のように元カノがいたんだからこれは予想出来たことよ。ただ、いきなり叩かれるのは予想外だったけど」

項垂れた隆政を見つつ美織は続ける。

「きれいに別れられてなかったのは隆政さんが悪いと思う。それは猛省すべきだと思うわよ」

「はい………」

「だけどね、それも引っくるめて付き合うことを了承したのは私なんで。自分だけが悪いと思うのはちょっと浸りすぎ?モテる俺が悪いんだ!みたいな?」

「い、いや!!そんなことは全く思っていない!!」

「そう?じゃあ、もうウジウジするのやめてよ」

「だが……俺のせいで……」

「なんなの?悲劇の主人公?落ち込んでる俺、結構イケてるとか思ってるの?」

「思ってないっ!!そんなこと思うヤツ頭おかしいだろ!?……まさか……そんな風に…俺が…思ってると……?」

隆政はとうとう箸を置き、身を乗り出して抗議した。

「思うわけないでしょ。だからっ!ウジウジするくらいなら、男らしくすっぱり一度の土下座で終わらせるとかしたらどう!?」

初めて聞く美織の大声に、隆政はビクッとした。
表情筋も固まったのか微動だにしない。
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