この溺愛にはワケがある!?
(あ、あれ?びっくりしてる?何に驚いたの?土下座しろって言ったこと?えー、冗談なのにー??)
とはいえ美織は半分本気だった。
土下座で終わるならその方が楽だ。
だがやはり男はプライドの生き物。
それはしたくないことなのだろう。
「な、なーんてね………」
冗談でしたー、とおどけて言うつもりだった美織の目の前では今、とても信じられない光景が広がっている。
それは一瞬の出来事だった。
サッと立ち上がった隆政は、スーツのジャケットの裾をファサッと翻らせる。
と同時にしゃがみこみ、綺麗に正座をすると腰をパタンと折った。
一体どこで習得したのか。
もしかしたら流派もあるのかもしれない、そんな気さえする見事な土下座をして見せたのだ!
わずか一秒程の間に起きた出来事に、美織のレンゲは雑炊もろとも落下した。
「この度は大変申し訳ございませんでした!以後このようなことがないように誠心誠意励んで参ります!ですから!どうか!俺にもう一度挽回する機会を下さい!!」
隆政のテノール歌手のような良い声が平屋に響き渡る。
が!言っていることはかなり情けない。
「え?嘘………」
「嘘なんてつかない!頭なんていくらでも下げるぞ!もっとか?足りないか?何度でも………」
(いや、そういう意味じゃなくてっ!!)
正座のままズリズリと距離を詰められ、美織は怖くなって投げやりに叫んだ。
「うわぁ、もう充分です、はい許す許す」
「…………軽い……軽いだろう、それは。ちゃんと許すと言ってくれ!」
詰め寄る隆政と、追い詰められる美織。
もうどちらがあやまっているのかわからない。
「ゆ、許しますっ。許してあげます!だからちゃんと座ってよ!」
「………そうか。ありがとう。もう絶対こんなことはない。させない、誰にも」
隆政は正座のまま、美織の手を取り大きな自分の手で包み込む。
完全にいつもの調子を取り戻した隆政は包んだ手を離さず、もう一度「ごめん」と呟いた。
「うっ……うん。あの座ろ?椅子に……」
「………雑炊……もっとある?」
いつの間にか隆政の茶碗は空だった。
「あるわよ!!もっと、ね。おにぎりも作れるし、他にも……」
「雑炊と、おにぎりと、後はみおがいればいい。他にはいらない、今日は、な」
立ち上がって冷蔵庫を探ろうとした美織を、隆政がグイッと引き寄せる。
そのまま朝の続きと言わんばかりの甘い甘いキスで唇を塞がれ、完全復活を遂げた彼のなすがままになった。
朦朧とする意識の中で美織が一瞬考えたこと。
《こうでなくては『黒田隆政』ではない》
もう半分以上黒田菌に冒されつつある脳の病状は思ったよりも進行が早い。
そして、もちろん治療法もないのだ。
とはいえ美織は半分本気だった。
土下座で終わるならその方が楽だ。
だがやはり男はプライドの生き物。
それはしたくないことなのだろう。
「な、なーんてね………」
冗談でしたー、とおどけて言うつもりだった美織の目の前では今、とても信じられない光景が広がっている。
それは一瞬の出来事だった。
サッと立ち上がった隆政は、スーツのジャケットの裾をファサッと翻らせる。
と同時にしゃがみこみ、綺麗に正座をすると腰をパタンと折った。
一体どこで習得したのか。
もしかしたら流派もあるのかもしれない、そんな気さえする見事な土下座をして見せたのだ!
わずか一秒程の間に起きた出来事に、美織のレンゲは雑炊もろとも落下した。
「この度は大変申し訳ございませんでした!以後このようなことがないように誠心誠意励んで参ります!ですから!どうか!俺にもう一度挽回する機会を下さい!!」
隆政のテノール歌手のような良い声が平屋に響き渡る。
が!言っていることはかなり情けない。
「え?嘘………」
「嘘なんてつかない!頭なんていくらでも下げるぞ!もっとか?足りないか?何度でも………」
(いや、そういう意味じゃなくてっ!!)
正座のままズリズリと距離を詰められ、美織は怖くなって投げやりに叫んだ。
「うわぁ、もう充分です、はい許す許す」
「…………軽い……軽いだろう、それは。ちゃんと許すと言ってくれ!」
詰め寄る隆政と、追い詰められる美織。
もうどちらがあやまっているのかわからない。
「ゆ、許しますっ。許してあげます!だからちゃんと座ってよ!」
「………そうか。ありがとう。もう絶対こんなことはない。させない、誰にも」
隆政は正座のまま、美織の手を取り大きな自分の手で包み込む。
完全にいつもの調子を取り戻した隆政は包んだ手を離さず、もう一度「ごめん」と呟いた。
「うっ……うん。あの座ろ?椅子に……」
「………雑炊……もっとある?」
いつの間にか隆政の茶碗は空だった。
「あるわよ!!もっと、ね。おにぎりも作れるし、他にも……」
「雑炊と、おにぎりと、後はみおがいればいい。他にはいらない、今日は、な」
立ち上がって冷蔵庫を探ろうとした美織を、隆政がグイッと引き寄せる。
そのまま朝の続きと言わんばかりの甘い甘いキスで唇を塞がれ、完全復活を遂げた彼のなすがままになった。
朦朧とする意識の中で美織が一瞬考えたこと。
《こうでなくては『黒田隆政』ではない》
もう半分以上黒田菌に冒されつつある脳の病状は思ったよりも進行が早い。
そして、もちろん治療法もないのだ。