この溺愛にはワケがある!?

隆政と資源ゴミ

「あっ、資源ゴミ!!」

目が覚めてすぐ美織は叫んだ。
それは年間ゴミカレンダーが頭の中にインプットされている美織の悲しき習性だった。

「んー………資源ゴミ?」

「そう、二週間に一度だから今日捨てないと溜まっちゃう」

また勢いでお泊まりをした隆政の腕の中で美織はくるりと向きを変える。
昨日、出張の途中で帰ってきた隆政に戻らなくていいの?と美織は尋ねた。
その答えを隆政は良い笑顔で言い放ったのだ。
『二便で来た成政に任せたから大丈夫』と。
美織は突然全てを丸投げされた成政を気の毒に思ったが、同時にそのポジションがベストなのかもしれない、とも思っていた。
何だかんだと文句を言いながらも、補佐として優れた才能を発揮するタイプ。
どうも成政はそういった人間に見える。
一頻り考えを巡らせると、美織は薄くて固いせんべい布団から出ようとした。
だが、反射的に逃すまいと締め付ける隆政に邪魔をされる。

「ぐぇぇ……ち、ち、ちょっと……」

「あ、悪い、つい」

悪い、と言いながら全く謝っている様子のない隆政に美織は思いきり呆れた。
昨日の萎れた隆政もイヤだが、あまり自信たっぷりで絡まれるのも考えものだ。
ふぅ、とため息をつくと美織は布団を出る。
残された隆政は別れがたいように美織を見て、それから寒そうに体を折り曲げた。
シングルの布団に二人は狭い。
狭いどころか大きい隆政は普通に寝たら足が出る。
そのうちこれからのことを細かく話し合わなくてはいけないのだが、それよりも先ずは資源ゴミ。
美織はモコモコの暖かい上着を羽織ると玄関に向かった。
現在朝六時少し前。
冬の六時はかなり暗く、そしてすごく寒い。
平屋でしかも隙間風が入るこの家の冬は他の住宅に比べて遥かに厳しい、と思う。

「さっぶ!」

玄関を開けると開口一番美織は言った。

「うん、寒いな」

突然後ろから聞こえた声に、美織は一瞬寒さを忘れ飛び上がった。

「え!?え?何、何か用?どうかした?」

動揺する美織の後ろには、お泊まり用のスエットの上にロングコートを羽織った変な格好の隆政がいる。

「あー、うん……付いて行こうかと思って」

「……何で?」

「暗くて危ないし、資源ゴミの場所覚えたいし」

「……何で?」

「………何で何でって……そんなの、ほら、あれだ………次からは俺が行くからだ」

「……何でぇ!?」

朝の大声は迷惑です!
七重の声が聞こえたような気がして、美織は慌てて口を塞ぐ。
隆政はキョトンとしてそんな美織を見ていたが、すぐにその理由を話し出した。
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