この溺愛にはワケがある!?

似た者同士の男ども!

隆政が美織の家に越してきてから、大きなイベントが二つ過ぎた。
クリスマスとお正月だ。
さぞロマンチックなクリスマスを過ごしたと思われているだろうが、実際は違う。
隆政は半年前から決まっていた海外出張があり、どうしてもそれを変えることが出来なかった。
美織は特にクリスマスを一緒に過ごすことに固執していなかったが、隆政は違う。
なんとか出張を成政に押し付けようと、いろいろと裏工作をしたらしい。
だがそれを成政が美織にバラし、隆政はめちゃくちゃ怒られた挙げ句、泣く泣く台湾行きの飛行機に乗った………というのが、二人の最初のクリスマスの思い出となったのだ。
正月は二人で初詣に行き、あとは久しぶりの休みをゴロゴロして過ごした。
おせちをつつきながら、家から出ずにゆっくり過ごす。
人によってはつまらないこの休みの使い方は、美織には極上のご褒美である。
隆政もどこかに行きたい様子は全くなく、家で何かしら美織の手伝いをしながらニコニコと楽しそうにしていた。

あの怒濤の昼ドラ女の一件から、早くも三週間経っている。
そして美織と隆政が暮らし始めてからも、同じ時間が経過した。
毎朝、始業時間が三十分早い隆政を見送ってから、ゆっくりと美織は準備をする。
夜は仕事内容によって帰り時間が左右される隆政に合わせることなく、遠慮せず先に休ませてもらうことにしていた。
最初の取り決めで、お互いの生活バランスを乱さないことを約束していたからだ。
就業時間が決まっている美織と、ほぼ自由業の隆政。
絶対に時間が合わないことは、多少付き合ってわかっていた。
遅くなるときは必ず隆政から連絡があり、早いときは美織より先に家にいることもある。
そんな時は大体、習得した『御飯の炊き方』を嬉しそうに実践しているのだ。
そうして特に衝突することもなければ、譲り合うというわけでもなく、気づいたら当たり前のようにそこにいる……そんな空気のような関係に美織自身も少し驚いていた。

(……ヤバくない?初同棲でこんなに馴染んでいいの?私は楽だけど……隆政さんはこれでいいのかなぁ?)

結納を明日に控えた土曜日の朝、美織はコーヒー片手にぼーっとそんなことを考えている。
隆政は新造船の起工式で、今日は朝早くから会社に行っており留守だ。
『鯛を貰って帰るから、今日はお刺身な!!』と、嬉しそうに出ていったが、何で起工式で鯛を持って帰るのかわからない。
颯爽と出ていった隆政に尋ねる間もなかった美織は、仕方なく起工式を調べてみた。
「起工式 造船」で検索。
すると誰かのブログの記事があり、詳しく手順や準備物など書いてあった。
着工する前の完成の無事を願ってする祈願で、そのお供え物の中に鯛のオスとメスを一匹づつ準備するとある。
他にも米や酒、昆布や野菜や果物様々な物が三方に盛られている様子が写真で紹介されていた。
そして終わってから、神事を行ってくれた神主さんともろもろ半分こ(一匹づつ分ける)にするらしい。
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