この溺愛にはワケがある!?
(なるほど。その鯛ねー、きっと立派なんだろうなぁ……)

と、美織はお刺身以外の使い道を頭の中で考えた。
鯛めし、お吸い物……あとは……三品目に差し掛かった所で美織の思考は中断した。

ガチャガチャ!ガラガラ!

(ん?隆政さん?早いなぁ。まだお昼も来てないのに……)

玄関が開く音がして、美織は慌てて廊下に出た。

「おかえ…………りっ!?え?ゆ、行政さん……いえ、お爺………様??」

狭い玄関には目をつり上げて怒っている風な隆政と、肩を落とし珍しく弱々しい行政がいた。

「ああ、美織さん、ごめんね。少し上がってもいいかな?」

「ええ、どうぞどうぞ、上がって下さい」

どこか覇気のない行政を居間へと案内し、美織は小声で隆政に尋ねた。

「どうしたの??様子が変だけど」

「うん。その事で話がある。みおも居間に来てくれ」

「え……うん、わかった。お茶淹れてくるね」

台所で急いでお茶とお菓子を用意し、美織は居間へと向かった。
七重と両親の遺影の前で、行政と隆政は向かい合って座りその側に美織も座る。
何故か加藤家を含めた家族会議のようだ。
美織の心は少し和んだが、二人の重苦しい雰囲気を見て気を引き締める。

「で……何があったんですか?」

美織は口火をきった。

「婆さんがヘソを曲げた。今、アマテラスみたいになってる」

黙った行政をチラリと見て隆政がそれに答えた。

「は?あ、あまてらす??になってる?小夏さんが!?」

「名前知ってるのか?」

「うん。藤堂さんに聞いた」

「そうか。《明日の結納、私は絶対行きません!》てな?離れに籠っちまって出てこねぇ。全くどういうつもりだよ。爺さん、ちゃんと話し合ってなかったのか?!」

隆政は声を荒らげた。
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