この溺愛にはワケがある!?
ファンタジーワールドへようこそ!
朝五時。
結局三時間ほどしか眠れなかったにも関わらず、美織はいつもの時間に目を覚ましてしまった。
進水式の次の日はあんなに寝坊してしまったのに、と思ったがそれはこれから赴く『戦』に興奮しているのかもしれない。
そしてそれは、隣に寝る男もそうだった。
「おはよ、早いな」
そう言いながら、隆政は固い布団の上で伸びをする。
「うん、あんまり眠れなかったね。朝御飯の準備する?ちょっと早いけど」
「そうだな。さて、と。じゃあ俺は米を磨ごうかなー」
隆政の今唯一出来る料理。
それはご飯を炊くことだ。
「ふふっ、よろしくお願いします」
『腹が減っては戦が出来ぬ』とは良く言ったもの。
二人は笑い合い、戦の為の準備をすることにした。
********
軽く朝御飯を済ませると、時間は七時になっていた。
結納はホテルで十一時から。
出来ればそれまでに黒田の本宅で小夏と話さなければいけない。
ちゃんと話し合いになるかどうかはわからないが、これは避けては通れないことだ、と美織は強く拳を握った。
慌てて準備をし、時計が八時を過ぎた頃、隆政の車で黒田の本宅に向かう。
人を訪ねるには少し非常識な時間だが、この場合はやむを得ないだろう。
予め行政には連絡してあるので、その辺は特に心配することはない。
市内から車を走らせること三十分。
景色は華やかな町並みから寒色のダークブルーに変わる。
海沿いの道では、防波堤でのんびり釣りをしているオジさん達が疾走する高級国産車を珍しそうに振り返っていた。
やがて、海沿いの道から山に沿って入り、ヘアピンカーブをいくつか抜ける。
車酔いする人なら途中で断念しそうな道だ。
その道沿いには大きな邸宅がいくつもあり、ここがお金持ちの人達の居住区となっていることがわかる。
洋風から和風まで。
中にはお城のような建物まである。
「別荘とかも多いよ。この辺はね」
ハンドルを慣れたようにきりながら隆政は言う。
(なるほど、別荘なんだ……黒田家はあるのかな?)
ほんの軽い疑問を美織は口にした。
「へぇ?黒田さんちの別荘は?」
「うちはここにはないよ。海外には何件か………」
「あ、もういいです。ごめんなさい」
「何だよ、自分で聞いといて……」
不満そうな隆政の横顔を見ながら、美織は冷や汗をかいた。
気安さにすっかり忘れていたが、この男、とんでもないお金持ちだったのだ!
最近では平屋にとても馴染んでいるが、本来ならこのファンタジーワールドの住人である。
そのことを再確認し少し尻込みをする美織であった。
結局三時間ほどしか眠れなかったにも関わらず、美織はいつもの時間に目を覚ましてしまった。
進水式の次の日はあんなに寝坊してしまったのに、と思ったがそれはこれから赴く『戦』に興奮しているのかもしれない。
そしてそれは、隣に寝る男もそうだった。
「おはよ、早いな」
そう言いながら、隆政は固い布団の上で伸びをする。
「うん、あんまり眠れなかったね。朝御飯の準備する?ちょっと早いけど」
「そうだな。さて、と。じゃあ俺は米を磨ごうかなー」
隆政の今唯一出来る料理。
それはご飯を炊くことだ。
「ふふっ、よろしくお願いします」
『腹が減っては戦が出来ぬ』とは良く言ったもの。
二人は笑い合い、戦の為の準備をすることにした。
********
軽く朝御飯を済ませると、時間は七時になっていた。
結納はホテルで十一時から。
出来ればそれまでに黒田の本宅で小夏と話さなければいけない。
ちゃんと話し合いになるかどうかはわからないが、これは避けては通れないことだ、と美織は強く拳を握った。
慌てて準備をし、時計が八時を過ぎた頃、隆政の車で黒田の本宅に向かう。
人を訪ねるには少し非常識な時間だが、この場合はやむを得ないだろう。
予め行政には連絡してあるので、その辺は特に心配することはない。
市内から車を走らせること三十分。
景色は華やかな町並みから寒色のダークブルーに変わる。
海沿いの道では、防波堤でのんびり釣りをしているオジさん達が疾走する高級国産車を珍しそうに振り返っていた。
やがて、海沿いの道から山に沿って入り、ヘアピンカーブをいくつか抜ける。
車酔いする人なら途中で断念しそうな道だ。
その道沿いには大きな邸宅がいくつもあり、ここがお金持ちの人達の居住区となっていることがわかる。
洋風から和風まで。
中にはお城のような建物まである。
「別荘とかも多いよ。この辺はね」
ハンドルを慣れたようにきりながら隆政は言う。
(なるほど、別荘なんだ……黒田家はあるのかな?)
ほんの軽い疑問を美織は口にした。
「へぇ?黒田さんちの別荘は?」
「うちはここにはないよ。海外には何件か………」
「あ、もういいです。ごめんなさい」
「何だよ、自分で聞いといて……」
不満そうな隆政の横顔を見ながら、美織は冷や汗をかいた。
気安さにすっかり忘れていたが、この男、とんでもないお金持ちだったのだ!
最近では平屋にとても馴染んでいるが、本来ならこのファンタジーワールドの住人である。
そのことを再確認し少し尻込みをする美織であった。