この溺愛にはワケがある!?
美織、両親に挨拶をする
「で、ここが居間でー、その向こうに応接室がある。応接室は実は二部屋あって、同時に二組と取引出来るようになってる」
隆政は美織に本宅を案内している。
行政が自室で日記を読む間、手持ち無沙汰になったのだ。
とにかく広い本宅は、隆政が一緒にいなければ迷子になるに違いない。
それほどの部屋数があった。
だが、その部屋数の多さと、住んでいる人の少なさに若干の寂しさもある。
昔は隆政の両親もいて、さぞ活気あふれる家だったのだろうな、と美織は考えていた。
「こんな広いお宅に夫婦と牧さんだけで、寂しくないのかな?」
美織は思うまま尋ねた。
「……どうだろう……でもな、それをいうなら、俺はあの平屋で一人で生きてたみおのことも、そんな風に考えたよ」
「私?…………私は、寂しくなかったよ……あ、でも、そう言えば課長に言われたわ。引きこもってたって……」
つい先日、前田課長に言われたことを思い出し、隆政に言った。
「引きこもりか……自分が気付かないだけで、寂しかったんだよ、それは……」
「そうかな?」
「うん。まぁ、これからは寂しくないからな!俺がずっといるし」
太陽のように笑った隆政は、少し恥ずかしかったのか、すぐに背を向けて歩き出す。
そんな隆政の腕をとり、美織も微笑んでその後に続いた。
一階の案内が終わり、今度は二階に移動する。
少し照明が落とされた廊下に、こげ茶色の扉が等間隔で配置されていた。
向かって右の部分は客間とされているようで、開けるとホテルのような同じ作りの部屋になっている。
次に二人は左の扉に移動した。
すると左奥の部屋の前で、突然隆政が足を止めた。
「ここは両親の部屋だ」
「そうなの?じゃあ……開けない方がいいよね?」
「いや、出来れば見て欲しい」
そう言うと、隆政はドアノブをグッと握りこんだ。
音もなく開いた扉の中には、主を亡くした家具たちがひっそりと佇んでいて、心なしか悲しそうにも思えた。
隆政が窓へ向かい大きく開け放すと、使われてなかった部屋の淀んだ空気が一斉に外に流れ出す。
「これ、見て」
隆政が指差したのは、チェストに飾られた一枚の写真立てだ。
美織はそれを手に取った。
写っているのは、とても美人な女の人と柔らかい笑顔の男の人。
それが誰であるのかはすぐにわかった。
「お父さんとお母さんね」
「ああ」
「似てる。お母さんと目元がそっくりだし、口元はお父さん……」
「そうか?」
「うん。とってもね!」
美織は写真立てを置いた。
そして手を合わせ、隆政が加藤家でしたのと同じように彼らに話し掛けた。
隆政は美織に本宅を案内している。
行政が自室で日記を読む間、手持ち無沙汰になったのだ。
とにかく広い本宅は、隆政が一緒にいなければ迷子になるに違いない。
それほどの部屋数があった。
だが、その部屋数の多さと、住んでいる人の少なさに若干の寂しさもある。
昔は隆政の両親もいて、さぞ活気あふれる家だったのだろうな、と美織は考えていた。
「こんな広いお宅に夫婦と牧さんだけで、寂しくないのかな?」
美織は思うまま尋ねた。
「……どうだろう……でもな、それをいうなら、俺はあの平屋で一人で生きてたみおのことも、そんな風に考えたよ」
「私?…………私は、寂しくなかったよ……あ、でも、そう言えば課長に言われたわ。引きこもってたって……」
つい先日、前田課長に言われたことを思い出し、隆政に言った。
「引きこもりか……自分が気付かないだけで、寂しかったんだよ、それは……」
「そうかな?」
「うん。まぁ、これからは寂しくないからな!俺がずっといるし」
太陽のように笑った隆政は、少し恥ずかしかったのか、すぐに背を向けて歩き出す。
そんな隆政の腕をとり、美織も微笑んでその後に続いた。
一階の案内が終わり、今度は二階に移動する。
少し照明が落とされた廊下に、こげ茶色の扉が等間隔で配置されていた。
向かって右の部分は客間とされているようで、開けるとホテルのような同じ作りの部屋になっている。
次に二人は左の扉に移動した。
すると左奥の部屋の前で、突然隆政が足を止めた。
「ここは両親の部屋だ」
「そうなの?じゃあ……開けない方がいいよね?」
「いや、出来れば見て欲しい」
そう言うと、隆政はドアノブをグッと握りこんだ。
音もなく開いた扉の中には、主を亡くした家具たちがひっそりと佇んでいて、心なしか悲しそうにも思えた。
隆政が窓へ向かい大きく開け放すと、使われてなかった部屋の淀んだ空気が一斉に外に流れ出す。
「これ、見て」
隆政が指差したのは、チェストに飾られた一枚の写真立てだ。
美織はそれを手に取った。
写っているのは、とても美人な女の人と柔らかい笑顔の男の人。
それが誰であるのかはすぐにわかった。
「お父さんとお母さんね」
「ああ」
「似てる。お母さんと目元がそっくりだし、口元はお父さん……」
「そうか?」
「うん。とってもね!」
美織は写真立てを置いた。
そして手を合わせ、隆政が加藤家でしたのと同じように彼らに話し掛けた。