この溺愛にはワケがある!?

絶対権力者の笑いのツボ

居間に戻った二人は、そこでソファーに座り顔を伏せて動かない行政を発見した。
気分が悪いとかそんなものではない。
ただ思い出の中にある何かと会話をしている、そんな風に見えた。

「爺さん、これで満足したか?」

行政はゆっくりと顔を上げ隆政を見て、次に美織を見た。
何かを言わなければ……と、思ったのだろうか?
しかし、開いた口からは、言葉にならないため息が漏れるだけ……。
そんな行政を見て美織は静かに言った。

「あの……何も言わなくてもいいんです。それは心の中にしまっておいて下さい。祖母の気持ちをわかっていてくれるだけで救われると思いますので……」

美織のその言葉に行政はゆっくりと頷いた。
そして、握りしめた日記と美織を見て少し目を潤ませる。

「すまないね……美織さん、君は本当に七重さんにそっくりだな……」

「そうですか?おばあちゃんっ子ですからね!」

そう言って微笑む美織に、行政もいい笑顔で笑った。

「さて、次は婆さんだな」

隆政は向かいにある離れに目を向け呟いた。
そこには小夏が籠っている。
風呂もトイレも完備され生活には困らない。
だが食料がなく、何日も立て籠られると健康面での不安があったのだ。
本日のメインイベントに、美織の鼓動が少し早まった。
勇んで来たものの、これから言われることを想像して足も震えてしまう。
「昼ドラ」事件もかなりの衝撃があったが、今度はそれを超えることになるかもしれない。

七重は小夏の恋敵である。
行政の『心』を奪った敵だ。
そして、親友でありながら付き合っていたことを黙っていた。
つまり騙したことになる。
それを知った衝撃はかなりのものだったはずだ。
もし隆政にずっと密かに想う人がいて、それが自分の親友で、その親友が彼と付き合っていたことを自分に黙っていたら?
美織はその親友を許すことが出来るだろうか………。
そんな状況になったことがなくても、想像するだけで気分が悪くなる。
小夏の立場に立ってみれば、七重の孫など許せるはずもないのではないか。
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