この溺愛にはワケがある!?
「みお?」

隆政の呼び掛けに、美織は考えるのをやめた。
そうだ、考えたってわからない。
そう思ってここに来たのだ。
美織に出来るのは小夏の思いを受け止めることだけ。
どんなことを言われたって構わない。
七重も美織もただ真っ直ぐに生きてきただけなのだから。

「隆政さん、行きましょう」

と、美織は隆政に手を出した。

「ああ」

隆政は大きな手で美織の手を強く握り返す。
するとソファーから立ち上がった行政が、二人のもとへやって来て日記を手渡した。

「迷惑をかけるね……」

「いえ、乗り掛かった船です……あ、造船会社だけに??」

面白いことを言ったつもりの美織は、よく考えたらそれがオヤジギャクだと気付き、途端に恥ずかしくなった。
隣を見るとやはり隆政は困ったように苦笑いをしている。
だが…………行政にはウケた。
大ウケだ。
美織のオヤジギャクは彼のツボにはまったらしく、大声で笑い出しソファーに踞って更に笑った。

(いや、そこまで?逆に恥ずかしいわ!!)

ぷるぷる震え始めた美織を見て、隆政は手を引いて離れに向かった。
未だに苦笑いの隆政と恥ずかしさに震えている美織、ソファーで腹を抱える行政。
そんな3人を影から見ていた牧も、お玉を握りしめて漏れる笑いを堪えていた。
< 148 / 173 >

この作品をシェア

pagetop