この溺愛にはワケがある!?
「大丈夫ですかっ!?すごい音がしましたけど!!」

「婆さんっ!!」

美織も隆政も共に慌てて声を上げた。
ドアの中では慌ただしい音が聞こえたが、それもほんの一瞬。
その後は物音一つせず、静寂が続いていた。

「婆さん!??」

「…………………大丈夫よ」

ドアの向こうから、少し上擦ったような声が聞こえてきた。

「っ!なんだよ!びっくりするじゃないか」

ドアの外の二人は胸を撫で下ろし、美織はまた小夏に話しかけた。

「突然押し掛けてすみません。驚かれたのですよね?それに……私のことをあまり良く思っていないのも知っています。祖母のことでは、何かとこちらの皆様にご迷惑を………」

「お待ちなさい」

小夏は美織の言葉を遮った。
話も聞きたくないのか、と美織は肩を落とした。
その時である。
ガチャガチャ、と鍵の開く音がした。

「お入りなさい」

「え?」

隆政と美織は顔を見合わせた。
思ってもみなかったことだが、このチャンスは逃せない。
隆政はドアノブに手をかけた。
しかし正にその瞬間、雷が落ちるような声がしたのだ。

「但し!!加藤美織さんだけよ!」

その声に二人は震え上がった。

「え?美織……みおだけ?それは……」

隆政は不安な思いを顔にした。
小夏が美織に何か酷いことをするとは思えない。
だが、もし二人きりにして話がこじれたら?
勢いあまってなんてことが、あるかもしれない。
そんな隆政とは対照的に、美織はとても吹っ切れた顔をしていた。
もともと、二人で話せたらと思っていたのである。
その気持ちは、小夏の声を聞いてから更に大きくなった。
きっとこの人は卑怯なことや理不尽なことを嫌う。
七重の選んだ友人が悪い人であるわけがない。

「隆政さん、私だけで大丈夫」

「みお!?ちょっと待て!」

「大丈夫だったら!私、お婆様とお話がしたい」

強く言い切った美織に、隆政はもう何も言わなかった。
ただ、優しく頭を撫で「頼む」と一言だけ呟いた。
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