この溺愛にはワケがある!?

この出会いに乾杯

「ハッピーバースデー!!美織さんっ!」

浮かれた老夫婦は、パァン!と楽しそうにクラッカーを鳴らした。
今日は一月二十日。
美織の二十六回目の誕生日だ。
その誕生日に何故、行政と小夏がいるかというと……まぁ、それにはわけがある。
初めてのクリスマスが出張で、悔しい思いをした隆政は、美織の誕生日に何かお祝いをしたくて仕方がなかった。
どこかに旅行に行って泊まろうか、と提案した隆政に美織も喜んで同意し、パンフレットまで持ち帰って準備をしたのである。
しかし、その話をどこからか聞いた老夫婦が『美織さんの誕生日を自分達も一緒に祝いたい!』だのと言い出したのだ。
百歩譲って『隆政の誕生日』ならわかる。
可愛い孫だし、跡取りだし。
どうして美織の誕生日を皆で祝うのか……その疑問に老夫婦はあっさりと答えてくれた。

『私達は七重さんの代わりだからね。七重さんも美織さんの誕生日を一緒に祝いたいに違いない。だから、ここで皆で祝いたいんだよ』

と、涙が出そうな言葉を言った。
だがそれでも隆政は鬼のように反対した。
誕生日なんて来年もやって来るから次にしろ、今年は二人だけで祝いたいんだ!!と。
しかし、まだまだ青二才の隆政くんは老獪な二人には敵わない。

『私たちは老い先短いんだ!!明日死んだらどうしてくれるっ!?』

そう言われるともう何も言えず、隆政も美織も呆れながら頷くしかなかった。
しかし今、美織はこれで良かったと思っている。
当日の楽しそうな二人を見て、写真立ての中の七重が凄く笑っているように見えたのだ。

(良かったね、おばあちゃん。これが望んだことでしょ?)

当然七重の返答などないが、そんなものなくても美織にはわかっていた。
仏壇の七重の写真の横には、美織の両親の写真と更に新しく隆政の両親の写真も置いている。
この部屋に集まる方が圧倒的に多いし、賑やかで寂しくないかな……と美織が提案したのだ。
心なしか、写真の皆が楽しそうに見えるのは、きっと思い過ごしなんかじゃない。
そう美織は感じていた。

「美織さーん?!シャンパンはもうお開けしますか?」

台所から叫ぶ声に美織は考え事をやめた。
今日は本宅から牧が応援に来ている。
さすがに本日の主役に家事をやらせるわけにはいかない、という小夏の配慮からだ。

「あ、はーい!お願いします!」

という美織の声と同時にインターフォンが鳴った。
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