この溺愛にはワケがある!?
「あ!俺が出る!」

「え、あ、そう?」

玄関に行こうとした美織を止めて、いそいそと隆政が動く。
そうこうするうちに台所から高級シャンパンを開ける音が聞こえ、やがて芳醇な薫りと共に薄い黄金色のシャンパンが運ばれてきた。
牧は黒い艶のあるローテーブルにシャンパングラスを並べる。
行政、隆政によって破壊された加藤家の卓袱台は、行政によって新しい物に買い替えられていた。
何とかという北欧のデザイナーの一点物だそうだが、あえて詳しいことは聞いてない。
それが無意味なことだと最近になって気付いてきたからだ。
聞いてもわからないし、金額を聞くのは心臓に悪い。
ローテーブルは最初、びっくりするくらい居間で浮いていた。
行政と小夏と隆政がその場にいなければ、B級映画のCG加工のようになっていただろう。
黒田家の方々はそのCGを見事に現実と融合させ狭い居間のグレードをあげている。
いや、さすが、本物に囲まれてきた方々は一味違うな、と美織は心の中で喝采した。

「さあ、乾杯しよう!!ん?隆政はどうした??」

シャンパングラスを手に取った行政が言った。

「あ、さっき誰か来たみたいで……」

美織はひょいと玄関を覗くと、自分の見たものを信じられずに目を擦った。
………視界が……赤い!?
火事か!?
惨劇か!?
そう思って後ずさるとやがて全体像が見えてきた。
真っ赤に見えた物は玄関を埋め尽くす程の赤いバラで、その中には鉢植えの物も数点ある。
珍しい品種の青紫のバラも混じっていた。

「うわぁ!こ、これ、どうしたのっ!?」

その荘厳な姿に美織は思わず叫んでいた。
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