この溺愛にはワケがある!?
「バースデープレゼント。理一に頼んでいろんなバラを揃えてみたんだけど。庭に植え替えするだろ?手伝うよ!」

「あ………」

「ん?」

相変わらずスケールがデカい!
と言おうとしたが言葉が出なかった。
美織も一応隆政にプレゼントを用意している。
十一月十二日だった隆政の誕生日(美織がまだ隆政をポンコツだと思っていた頃)のプレゼントだ。
出会ってなかったならいざ知らず、一応出会っていたとなると、自分だけ誕生日をしてもらうなんて気が引ける。
そう思ってプレゼントを用意した。
だが今、自分が考えたプレゼントのショボさに正直泣きたくなっている。

「あ、ありがとう!!植え替えは暖かくなってからの方がいいよ。その時は手伝って!えーと、切り花は水揚げしとかないと……」

「ああ、美織さん、それは私がしておきますから!さぁ、皆さんでシャンパンを!!」

牧が気を利かせ二人を中に促した。

「ありがとう、牧さん!!」

ニッコリ微笑む牧に後を任せ、美織と隆政は席に着いた。

「お前もなかなかやるじゃないか。やっと女性の気持ちがわかるようになったのか?」

「本当ね。もうどうなることかと思っていたのよ。目が覚めてよかったわ。あのままだと、行政さんの代で会社も終わりかと……」

座るなり行政と小夏は皮肉を言い、好き放題言って目を見合わせた。

「ひでぇな……うん、まぁ、迷惑かけてたのは……悪いと思ってる」

「ま、何事も経験だ。何をバネにして頑張るかは人それぞれだしな。お前は美織さんを幸せにすることをバネにすればいい」

そういって行政は七重の遺影を見た。
何を考えているのかはわからない。
だが、そんな行政を見つめる小夏の目がとても優しく輝いていたのを美織は知っている。

「わかってるって……ああ、シャンパンの炭酸がぬけるぞ!」

「おお、そうだな、じゃあ……」

行政の合図に全員がシャンパンを掲げる。
そして全員の顔と写真を見て高らかに言った。

「美織さんの誕生日と私達のこの出会いに……乾杯!!」
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