この溺愛にはワケがある!?
隆政は美織の肩に額をのせ、最後の方は消え入りそうな声で呟いた。
顔は見えないがいつものようにタコになっている。
そんな気がして美織は肩を震わせた。

「おい、笑うなよ」

隆政は真っ赤になったまま顔を上げた。

「ごっ、ごめん。ごめんね。いや、あのね、恥ずかしいなら言わなきゃいいのにって思ったから……」

「………覚えてるか?焼き鳥屋で梨沙が言ったこと」

「え、いや………何だっけ?」

あの時はかなりインパクトのある話をしていた。
その衝撃が強すぎて梨沙の言葉をはっきりと思い出すことが出来なかった。

「好きなら誠実に伝えろ、言わなくていいこともあるなんて嘘だって。ま、あいつらしいんだけど……それは、当たっていると思う」

「…………………」

「俺はみおにだけは誠実でありたいと思う。これからもずっと。みおだけに……」

(顔を赤くしながら恥ずかしそうに言うのはそういう理由か)

美織は未だ目の前で赤面が直らない男を、堪らなく抱き締めたくなった。
そう思ってから行動に移すまでは、きっと一秒もなかったはず……。
美織がぎゅぅと抱き締めると、それよりももっと強い力で抱き締められ、息が止まりそうになった。
それもいいかもしれない、と美織は思う。
この腕の中での最後なら。
それは最高の幸せなのかも……。

「先に風呂に入るか?」

「え?」

「え?て……この流れはそういう流れだろ?」

隆政の方の準備は整っているようだ。
まるで目の前にエサを置かれた獣のように、良し!の合図を待っている。
ガルルルル……と、そんな声も聞こえそうだ。
しかし!
美織には今日、一大イベントが残っている!
それをやり終えるまでは食われてやるわけにはいかない!

「お、お風呂の前にっ!遅くなったけど私から隆政さんへ、誕生日プレゼントがあります!」

「え!?気にしなくて良かったのに!でも、嬉しいよ!」

満面の笑みの隆政にすごく言いにくそうに美織は言う。

「物なんて……あんまり要らないかなぁと思って……実は、あの、こんな趣向を……と……」
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