この溺愛にはワケがある!?
「ねぇ、そういえば今日の目的が果たされてないわ!」

「え?何だっけ?」

モンブランをつつきながら、美織は思い出したように隆政に詰め寄る。
実際さっきまで忘れていたのだが出張の話を切り出された途端に、頭の中にアレが思い浮かんだ。

「マーライオン!お土産でくれるって!待ってろって言ったわよね!ね!」

「………なんでそんなに勝ち誇ったような顔してるんだ?ああ、そうか。君は、俺が買ってこれなかった、無理だったって言うのを期待してるんだな?」

「……嫌だわ。そんなこと……あるけど」

隆政は今まで見たことないくらい楽しそうに笑った。
そして人生最大の意地悪顔をしているだろう美織を、愛しそうに眺めるのだ。

(何?ドSに見えて本当はドMなの?)

そんな下らないことを考えていた美織の前で、隆政は腕時計を見てうん、と頷いた。

「そろそろかな?」

「は?」

「みおが欲しくて欲しくてたまらないものだよ。あ、そうだ少し庭に入らせてもらったけど構わなかったかな?」

(事後報告!?そして、何故!?)

「……はぁ、まぁ、庭くらいなら……でも、なんで……」

「そうか!良かったよ!」

美織の疑問はまるっと無視され、隆政は肯定の部分だけを聞いていたようだ。

「少し早いけど行ってみる?お土産渡すよ」

嫌な予感しかしない……。
考えもスケールもまるで違う隆政の行動を計りかねた美織は仕方なく頷いた。
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