この溺愛にはワケがある!?
「すみませんっ!!」

扉を荒々しく開け、中に飛び込むとデスクに座った理一に掴みかかるように言った。

「た、隆政さ、んがっ!!おかしくて、早く、助け………」

美織の取り乱した様子に、理一は状況を把握した。
そして、すぐに走りだし先ほど別れたところまで一気に駆け抜ける。

ベンチにはまだ動けずにいる隆政が同じ姿勢で俯いていた。
理一はすぐに近づきその様子を確認する。

「おい!!隆政!!」

顔を覆う手をどけ隆政を確認した理一は、後ろで心配そうに見ている美織に微笑んだ。

「加藤さん、大丈夫だから。ちょっと事務所のソファーで休ませるね。少しここで待っててくれる?」

「え、でも……私も何か手伝います」

「ううん、大丈夫、待ってて」

有無を言わさぬ理一に、美織はそれ以上何も言えなかった。
その場に1人残った美織は、出しっぱなしのお弁当をしまうと深くため息をついた。

(間違いなくあれは私のせいだ。私のお弁当を見てからだったもの。でも一体どうして………)

その理由は、どんなに考えてもわからない。
そもそも理由を思い付くほど、美織は隆政のことを知らなかった。


そして、10分くらいたって理一が美織の元へやって来た。
穏やかな笑みを湛え美織の隣へ座ると、静かにゆっくりとした口調で話しかけてくる。

「びっくりしたよね……あれね、オレも最初見たときビビったよ」

「最初?」

「中学の時にね。隆政と両親が事故に遭って、両親は死に、あいつだけが生き残った」
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