この溺愛にはワケがある!?
「僕としたことが……大変失礼しました」

と、男は美織に名刺を差し出した。

「黒田造船……専務……黒田……成政……」

名刺にはそう書いてあった。

「ええ、黒田成政と申します」

「はぁ……」

美織は半ば放心状態で答えた。

「隆政はご存知ですよね?」

「ええ、まぁ」

「僕はいとこなんです」

「へぇ………」

(だから?何だ!?……あっれ?でも何だかこんなとんでも展開……最近どこかであったような……)

美織はハッとした。
そうだ。
つい3週間ほど前にあったじゃないか。
隆政とのお見合いが!!

(何なのよ……揃いも揃って……一体黒田さんちはどういう教育をなさっているのっ!?)

美織はメガネをくいっと指で持ち上げた!
それはもうまるで教育委員会の教育長か、校長、PTA会長も真っ青な美しい所作であったとか、なかったとか……。

「あの、それで、黒田隆政さんのいとこの方がどうして私に会いに??」

まさか本気でプロポーズに来たわけじゃないだろう、と美織はまだそう思っていた。

「貴女に結婚を申し込みに来たと言ったじゃないですか?」

(……あぁ……聞き間違いじゃなかったぁ!!)

黒田成政氏は、名刺入れを内ポケットに戻しながら素敵な笑顔で答えた。
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