この溺愛にはワケがある!?
(モテ期?いやいやいやいや、違うでしょ?黒田家限定だから!黒田さんちの坊っちゃんにだけモテるっておかしくない!?)

「モテ期……ではないと思いますね、むしろ……呪われているとかそんな感じですよ……」

美織は吐いて捨てるように言った。
そして、実際言葉にしてみると本当にその通りだと思ったのだ。
その発端は………そう、やはり行政の来訪から。
七重と何かしら関係のある行政、その行政の言葉にのせられてのこの事態だ。

「モテ期でないとすると……やっぱり御大《おんたい》が絡んでるとしか思えないわね」

お弁当をまたつつき始めた芳子は、美織の頭の中を読んだように言った。

「御大《おんたい》?」

「黒田行政社長。………ポンコツさんに聞いてみた方がいいよ。言わないかもしれないけどね」

そう……隆政に聞いても多分言わない。
何回か美織はその事に触れていた。
その度に理由もなく「みおじゃないとダメなんだ」の一点張り。
まるで、その理由を知れば全てが消えてなくなるかのように頑なに伏せるのだ。

(だけど、そこにこの事態の原因があるのなら……それを知りたい……でも……)

「ポンコツさんよりもインテリヤクザの方が喋ってくれそうよね?」

芳子はまたまた、美織の頭の中を読んだように言った。
踏んできた場数が違うのか、桁外れに感がいいのか。
いつもクールな主婦芳子は、こういった男女間の機微にとても敏感だ。
そう言えば財政課の有馬を落とすために、寧々にアドバイスをしていたのも芳子だった。
美織は改めてこのクールな主婦を尊敬の眼差しで見つめるのである。
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