この溺愛にはワケがある!?

がーるずとーく

「あ、美織さん、またメッセージ来ましたよー」

スマホの近くにいた寧々が、一番に気付いて美織に言った。
昼休みもあと十五分ほど。
ちょうど食事が終わった頃に、いつも隆政はメッセージを送ってくる。
付き合う前は、それでも一言二言だったのが、付き合ってからは恐ろしいくらいの量が送られてくるのだ。
美織は前に寧々に言った言葉を思い出し、一人でクスリと笑った。

『友達でこれだから、彼女になんて一時間おきとかかしらねぇ?』

(やっぱりそうだったわ。さすがに一時間おきではないのが救いかな)

「出張でしたっけ?」

スマホを除きこみながら寧々は言う。

「そう、年末だし、出張も多いんだって」

「折角付き合い始めたのに、全然デートしてないじゃないですか!!」

そういえば、付き合い始めてからどこかに出掛けたことはない。
だがまだ一週間しか経ってないし金曜から出張に行ったため、土日会えなかったというだけだ。

「そうね。でも……付き合い出したからってそんなに前と変わらないでしょ?」

「えー、そうですかぁ?もっとずっと一緒に居てイチャイチャしたくないですか?」

「え!?イチャイチャ!?ええと、まだそういう段階ではないと思う……わ」

「何言ってるんですか!そういう段階って……美織さんお堅すぎ!そんなのもう、勢いでやっちゃうもんですから!」

(勢いでやっちゃう!?)

「そうね、寧々ちゃんが正しいわ」

……芳子も勢いでやっちゃう派だった。
美織はどうやらここでは少数派らしい。
そんな美織も男の人とつきあったことがないわけではないし、そういった経験がないこともない。
だが、持って生まれた『石橋を叩いても渡らない』気質が軽々しくそういったことに踏み出せなくさせる。
お堅い……寧々の言うことは合っていると思う。

「そうなのかな?やっぱりお堅いの?私?」

「加藤さん、もちろん気が進まないのにヤれとは言ってないわよ」

(ヤれ……て……たまに言うこと凄いのよね福島さん……)

「はぁ……じゃあお堅いって言われないようにするにはどうするの?」

「心の感じるままに行動すればいいんです!」

寧々の目はキラキラしている。
こういった話題が好きなのか、もう食い付きが凄いし、身の乗り出し方も酷い。

「心の感じるままに……?」
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