この溺愛にはワケがある!?
(明日何作ろうかな。唐揚げときんぴらは好きみたいだし、久しぶりに蓮根の挟み揚げとか……うーん、全体的に茶色いわ……赤い物と緑の物も必要ね。じゃあ午前中に買い出しに行って………)

美織は閉じていた目を開けた。
何も考えずに返信したが、家に招いたということは……ここに来るということだ。
そんな当たり前のようなことを頭の中で繰り返しながら、美織は己の浅はかさを呪った。

(ヤバい。家に呼んでどうするの?ご飯が終わってから何するの?ていうか、家に呼ぶってこと自体《そういうのオッケーよ》ってことに……ならない!?ど、どうなの!?)

寝る前だった美織は、布団の中でゴロンゴロンと激しく寝返りを打った。

(はっ!!いざそういう行為に及ぶとき布団は敷くの!?え、そういう雰囲気になってから布団敷くの!?やだ、多分布団敷いてる間に冷静になりそう……)

降って沸いたこの布団問題に、美織の脳内は占拠された。
この狭い平屋にベッドなどない。
何故なら狭くて置けないからだ。
美織はもう何年も同じせんべい布団を使っていて、更に今、加藤家に布団は一組しかない!
すっかり目が冴えてしまいガバッと上半身を起こすと大きく頭を振る。
しかしそんな時ほど、思い出さなくてもいいことまで思い出すもの。
美織の頭の中では昼間の『がーるずとーく』がぐるぐる回っている。
『心の感じるままに』とか『勢いでやっちゃう』とか。
恥じらいなどまるでない昼間の話の内容が、どんどん美織の中でエスカレートする。

(おおぅ………ど、どうしよう……)

一度走り出した妄想は消えず、それから日付が変わっても一人悶々とする美織であった。
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