この溺愛にはワケがある!?
進水式③
「すまなかったね。美織さん」
「え?」
「見合いを強要した形になってしまって。それから、うちの問題に巻き込んでしまって……」
あの件か、と美織はピンときた。
「そうですよ!もう、困ります!私と結婚した方が社長になるなんてバカバカしい!」
「七重さんの……七重さんに良く似た君を、黒田の男が幸せにする……それは私の夢だったから……」
と、行政は美織を見た。
「七重さんと一緒になりたかった……その叶わなかった思いを隆政と成政に託したんだ。しかし、私のワガママもたまには役に立つ。こうやって美織さんと隆政がうまくいってくれたんだからな」
少年のような顔をして微笑む行政に、美織は少しドキドキした。
人は第一印象に左右されると言うが、美織の中で隆政よりも行政の方が第一印象が良かったのは事実である。
この黒田行政という色気たっぷりの男を振った七重は凄いな、と美織は拍手を送っていた。
「人の彼女に色目使うの止めてくれよ」
行政を睨み隆政が言った。
鋭い隆政は、美織のドキドキにも気付いていたようだ。
「ははっ!そうだ、そうやってお前はちゃんと美織さんを守っていればいい。ボヤボヤしてると、成政じゃなく私が相手になるからな」
「冗談じゃねぇよ!絶対とられねぇ!」
キッと行政を見て、隆政は美織の手を握る。
「頑張れよ。ああ、そうだ。美織さん、あの条件は無しにしたからね。もう隆政と成政が争うことはないよ」
「そうですか……よかった……」
(これで、職場も静かになるわー)
と、美織が思ったのも束の間、行政は更なる爆弾を投下した。
「社長は隆政に譲る。急ぐことはないが行く行くは美織さん、こいつと結婚していろいろ助けてやってくれるね?」
「けっ、結婚……ですか?どうでしょう、まだあの、えと……」
言い淀む美織を、隆政がカバーする。
「爺さん、それは俺が言うことだろ?ちゃんと言うときには言う。心配するな」
その答えを聞いて行政は目を見張る。
幼い頃の事故で、人として大事なものを失っていた孫は、いつの間にかちゃんと成長していた。
行政は実は隆政に会社を継がせることに、一抹の不安を覚えていた。
頭は良い、人当たりも良い、大きい商談も難なくまとめ上げる。
だが、その反面、隆政は人を信用していなかった。
その最たるものが女性関係についてだ。
隆政の素行については、弁護士の藤堂から逐一連絡が入っていた。
何人も女を変えては、執着せずどれも遊びで済ます。
いつか痛い目に会うぞ、と思っていた。
まぁ、それで考え方を変えられれば良いだろうと放置していたのだ。
……七重の手紙を受けとるまでは。
美織に隆政を会わせることは、行政の賭けでもあった。
生真面目な美織が、傲岸な隆政を気に入るとは思えないし、隆政が選ぶ派手な女と美織は正反対である。
そして、当然上手くは行かなかった。
隆政が美織を怒らせたと聞いたとき、やはりなと思ったのだ。
ーーしかし。
おかしなことがあるものだ。
行政が七重に惹かれたのと同じように、隆政も美織に強く惹かれたらしい。
人生一番の粘りを見せた隆政は、行政の想像を越えて、ついに美織を説き伏せた。
今目の前にいる二人を見て、行政はもう心配はないだろうと思っていた。
ハッキリと大切ものがわかっている今の隆政なら、会社を安心して任せられる。と。
「え?」
「見合いを強要した形になってしまって。それから、うちの問題に巻き込んでしまって……」
あの件か、と美織はピンときた。
「そうですよ!もう、困ります!私と結婚した方が社長になるなんてバカバカしい!」
「七重さんの……七重さんに良く似た君を、黒田の男が幸せにする……それは私の夢だったから……」
と、行政は美織を見た。
「七重さんと一緒になりたかった……その叶わなかった思いを隆政と成政に託したんだ。しかし、私のワガママもたまには役に立つ。こうやって美織さんと隆政がうまくいってくれたんだからな」
少年のような顔をして微笑む行政に、美織は少しドキドキした。
人は第一印象に左右されると言うが、美織の中で隆政よりも行政の方が第一印象が良かったのは事実である。
この黒田行政という色気たっぷりの男を振った七重は凄いな、と美織は拍手を送っていた。
「人の彼女に色目使うの止めてくれよ」
行政を睨み隆政が言った。
鋭い隆政は、美織のドキドキにも気付いていたようだ。
「ははっ!そうだ、そうやってお前はちゃんと美織さんを守っていればいい。ボヤボヤしてると、成政じゃなく私が相手になるからな」
「冗談じゃねぇよ!絶対とられねぇ!」
キッと行政を見て、隆政は美織の手を握る。
「頑張れよ。ああ、そうだ。美織さん、あの条件は無しにしたからね。もう隆政と成政が争うことはないよ」
「そうですか……よかった……」
(これで、職場も静かになるわー)
と、美織が思ったのも束の間、行政は更なる爆弾を投下した。
「社長は隆政に譲る。急ぐことはないが行く行くは美織さん、こいつと結婚していろいろ助けてやってくれるね?」
「けっ、結婚……ですか?どうでしょう、まだあの、えと……」
言い淀む美織を、隆政がカバーする。
「爺さん、それは俺が言うことだろ?ちゃんと言うときには言う。心配するな」
その答えを聞いて行政は目を見張る。
幼い頃の事故で、人として大事なものを失っていた孫は、いつの間にかちゃんと成長していた。
行政は実は隆政に会社を継がせることに、一抹の不安を覚えていた。
頭は良い、人当たりも良い、大きい商談も難なくまとめ上げる。
だが、その反面、隆政は人を信用していなかった。
その最たるものが女性関係についてだ。
隆政の素行については、弁護士の藤堂から逐一連絡が入っていた。
何人も女を変えては、執着せずどれも遊びで済ます。
いつか痛い目に会うぞ、と思っていた。
まぁ、それで考え方を変えられれば良いだろうと放置していたのだ。
……七重の手紙を受けとるまでは。
美織に隆政を会わせることは、行政の賭けでもあった。
生真面目な美織が、傲岸な隆政を気に入るとは思えないし、隆政が選ぶ派手な女と美織は正反対である。
そして、当然上手くは行かなかった。
隆政が美織を怒らせたと聞いたとき、やはりなと思ったのだ。
ーーしかし。
おかしなことがあるものだ。
行政が七重に惹かれたのと同じように、隆政も美織に強く惹かれたらしい。
人生一番の粘りを見せた隆政は、行政の想像を越えて、ついに美織を説き伏せた。
今目の前にいる二人を見て、行政はもう心配はないだろうと思っていた。
ハッキリと大切ものがわかっている今の隆政なら、会社を安心して任せられる。と。