この溺愛にはワケがある!?
進水式④
「まぁ!仲のよろしいこと!いつまでも見ていたいけど、残念ながらそろそろ式のお時間です。皆様、準備をして下さい」
真田に促され、やれやれというように行政は腰をあげた。
美織も隆政から差し出された手を取り一緒に席を立つ。
そうして、真田を含めた4人は会場へと向かった。
進水式の会場は会社からすぐ近くの道路を挟んだ場所にあった。
クリーム色で塗装された鉄製の階段を登ると、紅白の幕で周りを囲まれ床には赤絨毯の敷かれた広い場所に出る。
そこにはもう既に船主や来賓が集まっていた。
前を行く行政が来賓と話を始め、隆政も招待客に話しかけられ、とても忙しそうにしている。
邪魔をしてはいけないなと、美織は端の方に一人移動して新造船を眺めた。
新造船は大きくて美しく、黒い船体の曲線は女性の体のように滑らかだ。
近付いて下から覗き込むと、大きな船の上に薬玉がついていてそこから何本かの紐が延びている。
どこに続いているのか、と目で追っていると後ろから聞いたことのある声が掛かった。
「どうも、美織さん!」
「あ、おはようございます。成政さん」
インテリヤクザ風の男、黒田成政は飄々として美織の後ろに立っていた。
「結局隆政と付き合うことにしたんだって?」
「……え、ええ。まぁ」
「ふぅーん、残念だなぁ。僕、結構本気だったんですよ?社長になれなくたって、美織さんと付き合いたかったなぁ」
「は?またまたご冗談を……」
「冗談なんか言いませんよ?僕は。何故か物凄くあなたに惹かれるんですよね」
「そんなこと言われましても……」
ぐいぐい迫る成政に美織は隅に追い詰められた。
クリーム色の手すりが帯にあたって、もう後がなくなったとき、美織の目の端にダークグレーのスーツが見えた。
「おい、みおに近づくなと言ったろ?」
隆政が美織と成政の間に入り牽制した。
「おっと、騎士様の登場ですね。ま、仕方ない。退散しましょうか」
成政はそう言うと、睨みを利かせる隆政に向き直る。
「社長は大賛成みたいですが、問題はまだありますよ。お婆様が納得すればいいですがね」
「……それはお前が考えることじゃない。俺がなんとかする」
二人は暫くにらみ合いを続けていた。
そのうち会場に司会のアナウンスが流れ、成政は美織に微笑むと何事もなかったように去っていった。
真田に促され、やれやれというように行政は腰をあげた。
美織も隆政から差し出された手を取り一緒に席を立つ。
そうして、真田を含めた4人は会場へと向かった。
進水式の会場は会社からすぐ近くの道路を挟んだ場所にあった。
クリーム色で塗装された鉄製の階段を登ると、紅白の幕で周りを囲まれ床には赤絨毯の敷かれた広い場所に出る。
そこにはもう既に船主や来賓が集まっていた。
前を行く行政が来賓と話を始め、隆政も招待客に話しかけられ、とても忙しそうにしている。
邪魔をしてはいけないなと、美織は端の方に一人移動して新造船を眺めた。
新造船は大きくて美しく、黒い船体の曲線は女性の体のように滑らかだ。
近付いて下から覗き込むと、大きな船の上に薬玉がついていてそこから何本かの紐が延びている。
どこに続いているのか、と目で追っていると後ろから聞いたことのある声が掛かった。
「どうも、美織さん!」
「あ、おはようございます。成政さん」
インテリヤクザ風の男、黒田成政は飄々として美織の後ろに立っていた。
「結局隆政と付き合うことにしたんだって?」
「……え、ええ。まぁ」
「ふぅーん、残念だなぁ。僕、結構本気だったんですよ?社長になれなくたって、美織さんと付き合いたかったなぁ」
「は?またまたご冗談を……」
「冗談なんか言いませんよ?僕は。何故か物凄くあなたに惹かれるんですよね」
「そんなこと言われましても……」
ぐいぐい迫る成政に美織は隅に追い詰められた。
クリーム色の手すりが帯にあたって、もう後がなくなったとき、美織の目の端にダークグレーのスーツが見えた。
「おい、みおに近づくなと言ったろ?」
隆政が美織と成政の間に入り牽制した。
「おっと、騎士様の登場ですね。ま、仕方ない。退散しましょうか」
成政はそう言うと、睨みを利かせる隆政に向き直る。
「社長は大賛成みたいですが、問題はまだありますよ。お婆様が納得すればいいですがね」
「……それはお前が考えることじゃない。俺がなんとかする」
二人は暫くにらみ合いを続けていた。
そのうち会場に司会のアナウンスが流れ、成政は美織に微笑むと何事もなかったように去っていった。