この溺愛にはワケがある!?
「大丈夫か?何かされた?」
「いえ。特に……あ、変なことは言われたけど……惹かれるとか、なんとか……」
自分で言うのが恥ずかしく美織は隆政から目をそらす。
「はぁ!?あいつ、あれほど言っておいたのに!……大丈夫だからな、みおに迷惑はかけない!心配しなくていいからな」
憤慨する隆政は自分の声が大きくなっているのを気づいていない。
周りにいる人が何事か?と振り向くのを見て、美織はハラハラして言った。
「隆政さんっ!声!声が大きいっ!」
「え?あ、あー、ごめん」
周りに気付き声を抑えると、今度はとても小さな声で美織の耳元で喋り始める。
「心配ないから」
そのあまりのセクシーボイスに美織の腰は砕けかけた。
もともと美織好みのとても心地好い声だ。
それが耳元であんな風に炸裂したらそりゃあもう堪らない。
気を紛らわせようと美織は精一杯違うことを考えた。
そうしないと本当に腰から砕けそうだったのだ!
「どうした?大丈夫?」
ニヤニヤしている隆政はきっと美織のこの状態をわかっているのだ。
(鋭いって、こういうとき嫌よね……)
持ち直した美織はスッと姿勢を正し、進水式の司会の方を向いた。
すると前方に並ぶ行政が小さく手招きをしている。
誰か他の人にだろうか?とキョロキョロしてみるがどうも違うようだ。
美織は口パクとジェスチャーで『私ですか?』と聞いてみると、行政もジェスチャーで『うん』と返してきた。
「隆政さん、行政さんが呼んでるのでちょっといってきますね 」
「ああ、仕事があるからな。俺も一緒に前にいこう」
(仕事?)
美織は一瞬だけ首をかしげ、時間がないことに気付きあわてて隆政と前に出る。
社長、船主、専務がい並ぶ中、小柄な美織は大きな隆政の横にちょこんと置物のように佇んだ。
それがどれほど場違いな光景なのかを想像すると、笑いがこみ上げそうだったがなんとか堪えた。
粛々と式典が進むなか、美織は着物の袖を引く何かに気付く。
「美織さん、これを」
小さな声で囁く真田は、手に小振りのオモチャのような斧を持っている。
「斧??」
「そう、斧。これをね、司会が『支綱切断(しこうせつだん)』って言ったら船主さんの奥様に渡してね」
「あ、はい。渡せばいいんですね?」
「そう、お願いね」
そう言って真田はササッと風のように消えた。
斧を不思議そうに持つ美織に、クスクス笑いながら隆政は説明を始める。
「支綱切断をするのは基本女性でそれが伝統だ。まぁ、どうしてもいない時は男がするんだが。でも女性の方が縁起がいいって言われてるな」
「縁起??」
「そう、船は女性だから。そういうのもあやかってるんだよ」
「へぇー!勉強になります、隆政先生!」
自分の知らない世界を知るのは楽しい。
地味だが知的好奇心が旺盛な美織は、目をキラキラさせながら隆政を見た。
そんな尊敬の眼差しで初めて見られた隆政は、グッと沸き上がる感情を押さえようと何回か大きく深呼吸をした。
「いえ。特に……あ、変なことは言われたけど……惹かれるとか、なんとか……」
自分で言うのが恥ずかしく美織は隆政から目をそらす。
「はぁ!?あいつ、あれほど言っておいたのに!……大丈夫だからな、みおに迷惑はかけない!心配しなくていいからな」
憤慨する隆政は自分の声が大きくなっているのを気づいていない。
周りにいる人が何事か?と振り向くのを見て、美織はハラハラして言った。
「隆政さんっ!声!声が大きいっ!」
「え?あ、あー、ごめん」
周りに気付き声を抑えると、今度はとても小さな声で美織の耳元で喋り始める。
「心配ないから」
そのあまりのセクシーボイスに美織の腰は砕けかけた。
もともと美織好みのとても心地好い声だ。
それが耳元であんな風に炸裂したらそりゃあもう堪らない。
気を紛らわせようと美織は精一杯違うことを考えた。
そうしないと本当に腰から砕けそうだったのだ!
「どうした?大丈夫?」
ニヤニヤしている隆政はきっと美織のこの状態をわかっているのだ。
(鋭いって、こういうとき嫌よね……)
持ち直した美織はスッと姿勢を正し、進水式の司会の方を向いた。
すると前方に並ぶ行政が小さく手招きをしている。
誰か他の人にだろうか?とキョロキョロしてみるがどうも違うようだ。
美織は口パクとジェスチャーで『私ですか?』と聞いてみると、行政もジェスチャーで『うん』と返してきた。
「隆政さん、行政さんが呼んでるのでちょっといってきますね 」
「ああ、仕事があるからな。俺も一緒に前にいこう」
(仕事?)
美織は一瞬だけ首をかしげ、時間がないことに気付きあわてて隆政と前に出る。
社長、船主、専務がい並ぶ中、小柄な美織は大きな隆政の横にちょこんと置物のように佇んだ。
それがどれほど場違いな光景なのかを想像すると、笑いがこみ上げそうだったがなんとか堪えた。
粛々と式典が進むなか、美織は着物の袖を引く何かに気付く。
「美織さん、これを」
小さな声で囁く真田は、手に小振りのオモチャのような斧を持っている。
「斧??」
「そう、斧。これをね、司会が『支綱切断(しこうせつだん)』って言ったら船主さんの奥様に渡してね」
「あ、はい。渡せばいいんですね?」
「そう、お願いね」
そう言って真田はササッと風のように消えた。
斧を不思議そうに持つ美織に、クスクス笑いながら隆政は説明を始める。
「支綱切断をするのは基本女性でそれが伝統だ。まぁ、どうしてもいない時は男がするんだが。でも女性の方が縁起がいいって言われてるな」
「縁起??」
「そう、船は女性だから。そういうのもあやかってるんだよ」
「へぇー!勉強になります、隆政先生!」
自分の知らない世界を知るのは楽しい。
地味だが知的好奇心が旺盛な美織は、目をキラキラさせながら隆政を見た。
そんな尊敬の眼差しで初めて見られた隆政は、グッと沸き上がる感情を押さえようと何回か大きく深呼吸をした。