この溺愛にはワケがある!?
進水式⑦
「それではここで、弊社代表取締役社長、黒田行政が乾杯の音頭をとらせて頂きます」
司会の声に少し静まった会場は、乾杯の音頭をとる行政に注目が集まっていた。
しかし何故か行政は、隅にいた美織と隆政に手招きをしている。
美織が持っていた花束を真田が颯爽と奪って行くと、それと同時に来賓客が振り向いた。
それを見て、やれやれと隆政が美織を押すように歩き始める。
「何?」
「ん、まぁ、爺さんのワガママの続きかな?」
短い会話を交わし、モーゼが海を割ったかのような人の中を美織は呆然としながら歩く。
(爺さんのワガママの続き?ああ、きっとロクなもんじゃないわ)
と、これから起こることを想像して、胃の辺りがキリリと痛んだ。
キンキラの屏風の前に、行政と隆政という超いい男に挟まれた庶民臭い地味な女。
これがお金持ちの皆様にどう映るのか、それを考えると美織は背中に冷や汗をかいた。
そんな中行政のスピーチが始まる。
「この度は新造船進水式にお集まり下さりどうもありがとう。これも一重に皆様と、いつもわが社に発注してくれる龍徳海運のおかげだと思っています」
ここで龍徳海運の劉社長が手をあげると、どっと笑いが巻き起こる。
その笑いを両手で制して行政は続けた。
「そんな家族ともいえる皆さんに、今日は大事なことを伝えなくてはなりません」
神妙な面持ちの行政に会場が静まり返る。
「ここにいる、孫の隆政にそろそろ跡を任せようと思っています」
行政は壇上から隆政に手を伸ばした。
おそらくこの発表のことを聞いていなかっただろう隆政は、何故か全く動じていない。
それどころかその姿は威風堂々として、まるでそれが当然だといわんばかりの勢いで前に出る。
「そして、これを機に孫の婚約者もご紹介します。こちら加藤美織さん、国立大を出、現在は市役所に勤務するとても優秀な方です」
コンヤクシャー?
美織の頭には?マークが入り乱れ、きらびやかな皆様の視線を一気に受けて卒倒しそうである。
だが、美織は耐えた。
ここで倒れては威風堂々とした隆政に恥をかかせてしまう!
言いたいことは山程あるが、とにかくまずは乗り切ろう。
両手をグッと握ると、一世一代の堂々とした微笑みを浮かべ頭を下げた。
「おお、これは!可愛らしい見かけに反してなんと肝の据わったお嬢さんだ」
劉社長の言葉を皮切りに、周りから絶讚の声が聞こえてくる。
それを聞いて行政はうんうんと頷き、隆政は頬を染め美織をうっとりと眺めていた。
(なるほど。爺さんのワガママ……これか!!これが最後の詰めだったのね!)
司会の声に少し静まった会場は、乾杯の音頭をとる行政に注目が集まっていた。
しかし何故か行政は、隅にいた美織と隆政に手招きをしている。
美織が持っていた花束を真田が颯爽と奪って行くと、それと同時に来賓客が振り向いた。
それを見て、やれやれと隆政が美織を押すように歩き始める。
「何?」
「ん、まぁ、爺さんのワガママの続きかな?」
短い会話を交わし、モーゼが海を割ったかのような人の中を美織は呆然としながら歩く。
(爺さんのワガママの続き?ああ、きっとロクなもんじゃないわ)
と、これから起こることを想像して、胃の辺りがキリリと痛んだ。
キンキラの屏風の前に、行政と隆政という超いい男に挟まれた庶民臭い地味な女。
これがお金持ちの皆様にどう映るのか、それを考えると美織は背中に冷や汗をかいた。
そんな中行政のスピーチが始まる。
「この度は新造船進水式にお集まり下さりどうもありがとう。これも一重に皆様と、いつもわが社に発注してくれる龍徳海運のおかげだと思っています」
ここで龍徳海運の劉社長が手をあげると、どっと笑いが巻き起こる。
その笑いを両手で制して行政は続けた。
「そんな家族ともいえる皆さんに、今日は大事なことを伝えなくてはなりません」
神妙な面持ちの行政に会場が静まり返る。
「ここにいる、孫の隆政にそろそろ跡を任せようと思っています」
行政は壇上から隆政に手を伸ばした。
おそらくこの発表のことを聞いていなかっただろう隆政は、何故か全く動じていない。
それどころかその姿は威風堂々として、まるでそれが当然だといわんばかりの勢いで前に出る。
「そして、これを機に孫の婚約者もご紹介します。こちら加藤美織さん、国立大を出、現在は市役所に勤務するとても優秀な方です」
コンヤクシャー?
美織の頭には?マークが入り乱れ、きらびやかな皆様の視線を一気に受けて卒倒しそうである。
だが、美織は耐えた。
ここで倒れては威風堂々とした隆政に恥をかかせてしまう!
言いたいことは山程あるが、とにかくまずは乗り切ろう。
両手をグッと握ると、一世一代の堂々とした微笑みを浮かべ頭を下げた。
「おお、これは!可愛らしい見かけに反してなんと肝の据わったお嬢さんだ」
劉社長の言葉を皮切りに、周りから絶讚の声が聞こえてくる。
それを聞いて行政はうんうんと頷き、隆政は頬を染め美織をうっとりと眺めていた。
(なるほど。爺さんのワガママ……これか!!これが最後の詰めだったのね!)