この溺愛にはワケがある!?
乗り切った美織は途端に冷静になる。
こんな場所で言われれば逃れようがない。
しかも、ここの来賓の中には新聞社の記者がいると聞いている!
地方紙だが、この地域の人にはお馴染みでほぼ全世帯がこの新聞を取っている……。
社長交代や婚約の記事も小さく載るのではないか。
だとすると進水式のお手伝いも、実は行政が仕組んだことだったのでは?
と、美織が考えているとその表情を読んだ隆政が耳元でこっそりと言った。
「俺も知らなかった」
「そうなの?」
「ああ、多分進水式に誘ったって言った時から仕組まれてたんだと思う。全く、順番ってものを知らない爺さんだ」
「順番?」
「こういうのは、俺がちゃんとプロポーズしてからだってさっきも言っただろ?でも結婚じゃなく婚約だって言ったってことは、少しは譲歩したんだろうな」
(譲歩!?このゴリ押しが!?本当に手段を選ばないな。よっぽど、おばあちゃんに振られたことが心残りなんだろうな……)
美織は怒りよりも、何故かそうまでして七重の願いを叶えようとする行政の、怖いまでの一途さを少し気の毒に思った。
そして、どうしても逃げられそうにない黒田家との縁に半ば諦めの気持ちになっている。
縁は異なもの味なもの。
相容れないこの縁が一体どうなっていくのか、そのことに興味すら覚えていた。
幸いなことに、付き合って日も浅い彼とは何故かこれからも一緒に過ごすような気がしている。
それは出会った頃にはなかった信頼というものが、この短い間にもしっかりと芽生えていたということだろう。
「隆政、お前からも挨拶を」
行政の声に隆政が頷き、美織の背中を押して前に出た。
『婚約者』として横に立ち、朗々といい声で豊富を述べる彼を見る。
あり得ないと思っていたその光景に、今は何か沸き立つものを感じている自分がいて美織は少し驚いていた。
「………今後、より一層精進し、伴侶となる美織の力を借りて更なる業界と会社の発展のために尽力する所存です」
(伴侶!?妻決定!?)
美織の驚きは会場の割れんばかりの拍手に無惨にかきけされ、誰にも気付かれなかった。
ただ、満面の笑みで振り返った隆政だけが『しまった』という顔で美織を見た。
こんな場所で言われれば逃れようがない。
しかも、ここの来賓の中には新聞社の記者がいると聞いている!
地方紙だが、この地域の人にはお馴染みでほぼ全世帯がこの新聞を取っている……。
社長交代や婚約の記事も小さく載るのではないか。
だとすると進水式のお手伝いも、実は行政が仕組んだことだったのでは?
と、美織が考えているとその表情を読んだ隆政が耳元でこっそりと言った。
「俺も知らなかった」
「そうなの?」
「ああ、多分進水式に誘ったって言った時から仕組まれてたんだと思う。全く、順番ってものを知らない爺さんだ」
「順番?」
「こういうのは、俺がちゃんとプロポーズしてからだってさっきも言っただろ?でも結婚じゃなく婚約だって言ったってことは、少しは譲歩したんだろうな」
(譲歩!?このゴリ押しが!?本当に手段を選ばないな。よっぽど、おばあちゃんに振られたことが心残りなんだろうな……)
美織は怒りよりも、何故かそうまでして七重の願いを叶えようとする行政の、怖いまでの一途さを少し気の毒に思った。
そして、どうしても逃げられそうにない黒田家との縁に半ば諦めの気持ちになっている。
縁は異なもの味なもの。
相容れないこの縁が一体どうなっていくのか、そのことに興味すら覚えていた。
幸いなことに、付き合って日も浅い彼とは何故かこれからも一緒に過ごすような気がしている。
それは出会った頃にはなかった信頼というものが、この短い間にもしっかりと芽生えていたということだろう。
「隆政、お前からも挨拶を」
行政の声に隆政が頷き、美織の背中を押して前に出た。
『婚約者』として横に立ち、朗々といい声で豊富を述べる彼を見る。
あり得ないと思っていたその光景に、今は何か沸き立つものを感じている自分がいて美織は少し驚いていた。
「………今後、より一層精進し、伴侶となる美織の力を借りて更なる業界と会社の発展のために尽力する所存です」
(伴侶!?妻決定!?)
美織の驚きは会場の割れんばかりの拍手に無惨にかきけされ、誰にも気付かれなかった。
ただ、満面の笑みで振り返った隆政だけが『しまった』という顔で美織を見た。