この溺愛にはワケがある!?

がーるずとーく、再び

毛利との話が終わり、美織は寧々と芳子の待つ休憩室に向かった。
そこでもきっと根掘り葉掘り聞かれるんだろうな、と腹を括った。
ただ、毛利と違い寧々も芳子も言って良いことと悪いことの区別がつく常識人だ。
話したところでそんなに広まることはない。
寧々も有馬にしか話さないだろうし、芳子に至ってはきっと旦那にも話さない。

「美織さーん、待ってましたよー!」

寧々がお箸を振りながら言い、

「さぁ、お座りなさい。そして、吐きなさい」

芳子は尋問の刑事のようにニヤリと笑った。
いつもの席に座り、時間がなくてコンビニで買ったパンを机に置くと、寧々も芳子も箸を置く。
聞く体制は万全のようだ。

「……あのですね、実は黒田さんとこ、こ、こっ婚約を……」

どもる美織に寧々が言う。

「はい、大体知ってます。実はさっき有馬さんからメッセージがあって……」

(な?!)

「うちも旦那から。食堂で噂になってるみたい」

(ひぃ!)

ひきつった顔の美織は、パンの袋を開ける手を止める。
そして、毛利死すべしと心の中で唱えた。

「でも、それがほんとかどうか本人に聞かないとわからないですからね?」

「そうそう。噂なんて、ねぇ。本人に聞くのが一番よ。で、昨日の進水式何があったの??」

寧々と芳子は身を乗り出した。
寧々はともかく芳子まで、普段は見せないニヤニヤした表情を浮かべている。
よっぽど興味が湧いたのだろう、と、美織は仕方なく婚約にまで及んだ経緯をかいつまんで説明した。
もちろん道中の痒くなりそうな言葉とか、プロポーズの言葉等は一切言ってない。
というか、言えなかった……。

「なんか不思議ですねぇ。黒田さんのおじいさんも美織さんのおばあさんと付き合ってて、その孫同士がって……ファンタジーですねぇ」

「ほんとね。加藤さん、どんな徳をつんだの?毎日、お地蔵さんを磨いて廻ってるの?」

「……してません。そして、何でお地蔵さん……」

呆れる美織に芳子はどんどん被せてくる。

「それで、あっちはどうだったの?」

「……あっち?」

「そう、体の相性はどうだったのかって……」

「ふぁっ!?」

「あら、もちろんシタわよね?婚約するくらいだもの」

寧々も芳子も何故か真顔だ。
真顔でする話じゃないし、そもそも人に言う話じゃない。
そして、昼御飯時にする話ではない!
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