君が隣にいるだけでいい。
そうだった。彼女は、私と同じ会社に就きながらも、立派な『お嬢様』だ。

「へぇ....。んで、花乃は?花乃は笠原くんのことどう思ってるの?」

「どう....って...好きだけど、恋愛感情は無いよ」

「......そっか」

話はそこで止まってしまった。

彼女、朝倉花乃《あさくらかの》は私の同期であり、親友でもある。
そして、彼女の婚約者となった笠原優輝《かさはらゆうき》も同じく同期で、私が想いを寄せる相手だ。

2人が結婚するという事実に、どうしても触れたくない私がいる。

モヤモヤが晴れないどころか、変な汗が滲み出てくる。

私は手元にあるジョッキを掴み、残っていたビールを飲み干した。

なぜか今日はいつもよりも苦く感じる。
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