MARCH
「えっと、とりあえず…………微分、あ、違。えっと、aに、あの、aの座標が(2.3)だから、それを……式、あの①の式に代入、して、みる?」
 苦し紛れに答えた疑問形の解答に、先生は半分苦笑を滲ませた表情を浮かべて黒板に向き直って、濃緑色のそれに白のチョークで文字を書き始めた。俺が答えたことはあながち間違ってはいなかったらしい。
 ひとまず安心して、俺はまた窓を少し閉めた。雨が再び強く降り始めている。後ろの席の女子が「この雨で電車止まったらどうしよう」と話している声が聞こえた。彼女はよく「学校つまらない」とぼやいているから、電車が止まることは少しの刺激があっていいんじゃないか? と無責任なことを思う。

 俺が抱いていた退屈には、既に“隣のクラスの彼女”というスパイスが効き始めているから。
 大雨による列車の運行休止なんてメじゃないくらいの、クレイジーな刺激だ。
 
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