訳あり結婚に必要なもの

酔って寝落ちする割に寝起きはすこぶるいいのが三輪だ。二日酔いも殆ど経験したことがないという。
あたしも二日酔いはないけど、休みの日の朝はぐーたらしたいタイプだから、朝起きるのは三輪のほうが早い。

「起きた?香澄さん」

香ばしい香りにムクッと起き上がったあたしを目敏く見つけた三輪は台所から顔を出す。三輪に掛けたタオルケットは綺麗に畳まれており、朝から爽やかな三輪がフライ返しを片手に微笑んでいた。

「おはよう、三輪」
「おはよう、香澄さん。昨晩はごめんね、寝落ちして。お詫びの朝ごはん作ってるよ」
「わーい!」

マメな性格の三輪はいつも冷蔵庫の中を漁って、美味しい朝ごはんを作ってくれる。あたしの眠気を飛ばしたこの香りはその朝ごはんによるものらしい。

ものの数分でテーブルにはホクホクの朝ごはんができた。朝から起きて炊いてくれたらしい白ごはん、豆腐の味噌汁、卵焼き、ベーコン。自分で作ったならここまで美味しそうにはならない。なんで白ごはんが輝いて見えるの?

「ありがとう!三輪!」
「いえいえ。こちらこそ、タオルケットをありがとう」
「私の部屋だからいいけどお店とかで寝落ちしないようにね」
「うん。気をつけるよ。いつもごめんね」

一応忠告はするが、三輪は職場の飲み会で潰れたことはない。普段はセーブしながら呑んでるくせにあたしと一緒だとついついハイペースで呑んでしまうらしい。それだけあたしに心を許してくれているようで嬉しいことだ。
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