訳あり結婚に必要なもの

驚き三輪を見つめると彼は穏やかに微笑んでみせた。

「昨晩、結婚の話、したでしょう?それで思ったんだ。香澄さんとならきっと素敵な家庭が築けるんじゃないかって」
「……三輪」

確かに。三輪はいつも優しいから、きっとさっきの妄想みたいに子供が生まれれば積極的に子育てのお手伝いをしてくれるんだろう。
元カレみたいに束縛が鬱陶しい、言いたいことが言えない、そんな思いもしないんだろう。

「どうかな?香澄さんは元カレにちゃんと婚約者を紹介できるし、僕は部長に勧められたお見合いを断る理由ができる。2人で暮らせば家賃は半額」

つまりあたし達が結婚すればお互いにメリットがあるってこと。

「恋人との時間はないかもしれない。でも僕達は伊達に11年も一緒に過ごしてきた訳じゃないよ。香澄さんの良いところもダメなところも、いっぱい知ってる。でもそのどれも許せるし、僕なら受け止められる」

あたしだって三輪のこといっぱい知っている。
たとえば、相談されたら目を逸らさずしっかり聞いてくれるところ。どんなにつまらないボケでも、肩を震わせて全力で笑ってくれるところ。感情表現が豊かなところ。優しすぎて自分でなにもかも抱えてしまうところ。人前で発表となると緊張して胃を痛めるところ。頑張ろうと気合いを入れれば入れるほど空回りするところ。

でもどんな三輪を見ても嫌いになったことなんてない。
そしてきっとそれは、これからも変わらない。まだ知らない三輪を知ってもきっと嫌いにならない自信がある。
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