訳あり結婚に必要なもの
恋愛感情を三輪に抱いたことはなかった。
トキメキなんて感じたことはない。
それでもきっと。
「あたし達は幸せになれる」
「……香澄さん」
「結婚しよう、三輪」
メリットだってある。
幸せになる自信もある。
だからきっと恋愛感情がなくてもいい。
「本当に?」
「本当に。だって自然と想像出来ちゃうんだもん、三輪と過ごす毎日」
交際0日。
勢い任せなのは承知の上だ。
「そうと決まれば親に報告しないとね」
「僕も親に伝えるよ。部長にも言わないとね、出来るだけ早く」
「お見合いがセッティングされちゃう前にね」
そして、あたしの元カレにも紹介しなきゃ。あたしにはこんな素敵な婚約者がいるんですよーって。
「その前にご飯食べよう。冷めちゃうよ」
「そうだね」
三輪は箸を持ってベーコンを食べ始めた。あたしも三輪手作りの美味しいご飯をいただく。
「結婚しても時々でいいから、美味しいご飯作ってね」
「もちろん。とびっきり美味しいのを用意するよ」
「やった!」
2人で美味しいご飯を食べて、一緒に片付ける。三輪が入れてくれたコーヒーを片手に、母にLINE 電話を入れ、結婚の意志を伝えた。こういうことは「思い立ったら吉日!」で動かなきゃいけないと思う。
交際0日婚だと正直に白状すると、驚いた母から『とにかく、三輪くんを連れてうちに来てちょうだい。そして、ちゃんと説明して!』そう叫ばれたのは言うまでもない。