訳あり結婚に必要なもの
三輪は主任という立場になり部長からそろそろ身を固めるよう言われたことを素直に吐露した。お見合いを勧められていることも。
「それから僕は結婚というものを真剣に考えてみました。どんな人と結婚したいのか。どんな人生を歩いて行きたいのか」
三輪の真っ直ぐな声に両親も真剣に耳を傾けてくれる。
ここに来るまで緊張で胃が痛いとずっと言っていた三輪。彼には話を聞かせる力があるのに、自分に自信がないせいでいつも気弱で緊張しい。家に帰ったら、またきっと終わった緊張感の解放から再び胃を痛めるのだろう。
「そのとき、頭に浮かんだのは香澄さんでした。友人として過ごした11年間、もちろんお互い恋人がいたこともありましたが、変わらず傍にあったその姿がこれからも隣にいてほしいと思ったんです」
三輪は一瞬こちらを見て口角を上げた。そして再び両親に向き合う。
「頼りないところがあることは重々承知しております。しかし、香澄さんが幸せになれるよう、精一杯の努力をしていくつもりです。ですからどうか、僕と香澄さんの結婚を認めていただけないでしょうか?」
「お願いします」
三輪と一緒に頭を下げた。沈黙が室内を漂う。
それを打ち破ったのは父だった。
「貴史くんの話はよく分かった。美和。君はどうなんだ?貴史くんと一緒になって幸せになれるのか」
両親の視線は今度はあたしに向けられた。顔を上げたあたしは一度小さく深呼吸をする。