訳あり結婚に必要なもの
「幸せになれます、絶対に」
あたしの言葉は自分が思っていたよりも力強かった。そんな自分に驚いて、でもそれだけこの結婚に確信があることに気づいて笑みがこぼれる。
「確かにあたしも三輪との結婚なんて今日の今日まで考えたことなかった。でもね。びっくりするぐらい、あたしは三輪との未来が鮮明に想像できるの」
隣を見ると三輪が穏やかに微笑んでいた。この笑顔が何十年先も隣にいてほしい。
再び両親の方を向くと、不意に父が大きく咳き込んだあと、グッと何かを堪えるように唇を噛み締め俯いた。そのまま小刻みに肩を震わせるからギョッとした。
「お、お父さん!?」
手の甲を口に押し当てる父。あらあらと母が可笑しそうに笑う。
「寂しいのよ、お父さんは」
何も言ってくれない父の心理を母が教えてくれる。
「反対したい訳じゃないのよ、お父さんは。美和ちゃんの幸せは嬉しいけれど、でもやっぱり複雑なのね」
……そうなの?だから、泣いてるの?お父さん。
「美和ちゃんが一人暮らし始めたときも、夜1人メソメソ泣いてたんだから」
「う、うるさい……」
思わぬ事実を暴露され父は耳まで真っ赤だ。俯いたままだけどきっと目も真っ赤なんだろう。
「お父さん、ありがとう」
不意に言いたくなって声に出してみると、父は一層肩を震わせた。
いつもあたしのことを想ってくれていること。
あたしの好きなことを、やりたいことをいつも応援してくれたこと。
本当にありがとう。