訳あり結婚に必要なもの
和明は本社一の花形、営業部。出会いは、技術部の先輩に人数合わせとして無理矢理連れて行かれた合コンだった。
誰かと付き合うつもりが全くなかったあたしは、先輩の奢りということで隅で1人、ひたすらお酒を呑んでいた。そんなあたしに声を掛けてきたのが、その合コンで1番人気の和明だった。たぶん、あたしだけが自分にちやほやしなかったから、気に食わなかったんだと思う。
とにかく、しつこい男だった。根負けして連絡先を教えてしまったのが運の尽き。合コン後の翌日から、毎日のように食事に誘われた。一体いつ仕事してんの?って言いたくなるくらい、頻繁にくるお誘い。せっかく無視していたのに、会社から家に向かう最中に彼にばったり会ってしまい、半ば強引に食事に連れて行かれた。彼のお金だししこたま呑んでやると調子に乗ったら、翌朝、彼とホテルで目を覚ますという大失態。
無かったことにしようとするあたしだったが、これまたしつこい男と気がつけば恋人同士になっていた。
「そこどいて。あたしは早く帰って寝たいの」
「つれないなぁ。せっかく恋人が会いに来たって言うのに」
「貴方とは随分と前に別れたわ。だから、今は恋人とは呼べない」
付き合い始めてもしつこい男だった。
毎日の連絡に、デートのお誘い。シフトの影響で夜間実験をしているだけなのに、どこに居るんだ、誰といるんだってうるさかった。