こおりざとう
普段ならそんなに気にならないけど(そもそも接点あんまりないし)、課題が終わってなくて焦っていた今の私は、その目つきに殺されちゃうんじゃないかって思ったくらいだ。
…なんて。
氷室くんを恐れてる暇はないんだった。
それに、喋ってみると噂ほど怖いわけではない。
ケンカが超強いヤンキーだ、とか。
実は既に何人か病院送りにしてる、とか。
有名企業の御曹司で、正体を隠してる…とか。
ぶっきらぼうだったけど、冷たそうな人ではなかったし。
もし噂が本当だとしても、どうでもいいと思うんだけどなぁ。
そんなことを思いながら、死ぬ気で課題を進める。
あと数問だし、きっと終わるはず。
「――終わった…」
時計を見ると、さっき氷室くんが来たときからちょうど十分ぐらい経っていた。
なんて思ってたら、やっぱり氷室くんが来た。
「小川さん、」
「終わりました!」
「…そう。じゃあ、預かる」
あ、でも。
本来の回収時間から、10分も過ぎてしまっている。
氷室くんは、先生に注意されないだろうか。