かわいい戦争
足元に置き去りになった、赤いリボン。
気に入っていたけれど、まろんちゃんに「欲しい!欲しい!」とねだられて仕方なくあげたら、想像以上に喜んでくれていつも身につけてくれていた。
その赤いリボンが、また、リタの手元に戻ってきた。
なんて、ひどい皮肉。
「……気分悪いのは、あたしのほうよ」
震える指先で優しく赤いリボンを拾う。
心も体も疲れ切ってるリタには、とても重たい物だった。
リタがひとりぼっちで苦しんでることなど知る由もなく、まろんちゃんはしかめっ面で楽屋へと歩いていく。
そこに忍び寄る、ひとつの影。
「すみません。服部まろんさんですよね?」
「は、はい、そうですけど……。すみませんが、あなたは?」
「あ、申し遅れました、〇×社の沖田と申します」
着慣れたスーツを纏う、30代後半らしき男性。
白い名刺と、一眼レフカメラ。
どこにでもいそうな平々凡々の顔で作られた営業スマイルは、異様に胡散臭く、危うくて。
秘密のひとつやふたつ、当然のように隠し持っていそうだった。
「服部さんに取材させていただきたいのですが、今お時間よろしいですか?」