かわいい戦争
今日はライブがあったんだし、しっかり休まないといけないんじゃないの?
夜更かしは美容の大敵だし。
プロ意識の強い璃汰が、どうして?
「ソロデビューは、あたしの夢だった」
ポツリ。
落ちた声音は、ちっぽけで。
閑散とした夜でなければ、すくい取れなかった。
「その夢を叶えることの何が悪いの」
「悪くないよ。何も悪くない。すごいことだよ!」
「じゃあどうして……!」
歌いすぎてしゃがれた喉。
痛々しくしかめた顔。
“リタ”で繕うこともできないくらい、苦しんでる。
璃汰が、泣いてる。
「どうして、皆、あたしを傷つけるの……?」
わたしが璃汰のものになった“あの日”が過って、鼓動を鈍らせた。
「ねぇ、どうして!?どうしてよ!!」
わたしの胸を強く叩いてるつもりの拳には、ほとんど力が入っていない。
叫べば叫ぶほど、拳がほどけていく。
「『オンナノコ*ソルジャー』はあたしが初めて手に入れた居場所だったのに……皆大事な仲間だって、卒業してもそうだって、思ってたのに……っ」
ついには拳はだらんと下がってしまった。
さっきまで叩いていた胸に、今度は璃汰の額が当たる。