かわいい戦争
「どうしてわかってくれないの。どうして祝福してくれないの。……どうしてファンまであたしの居場所を否定するの!」
やっぱり。
……ううん、案じてた以上に、過激派なファンの言葉を気にしてたんだ。
璃汰の苦痛を、悲しみを、わたしが全部もらえたら。
せめてわかち合うことができたら。
この涙もすぐ乾いていたのだろうか。
「やめてよ……あたしのこと、ちゃんと見てよ。あたしは何も持ってない。幸せなんか、一度もまともに手に入ったこと、ない……!」
ぎゅっと璃汰を抱き寄せた。
細い体。
華奢な肩。
こんなにも弱々しい身体で、一体どれだけのものを背負っているんだろう。
わたしじゃ楽にさせられなくて。
そばにいることしか、できなくて。
もどかしさを押し殺すように、強く強く抱きしめた。
「あたしに幸せをちょうだいよ」
「璃汰……」
「……あたしを、独りにしないで……っ」
今夜の星は、きらめかない。
雲に隠れて、光を失くした。
暗闇を飾るのは、たったひとつの月影だけ。
それだけじゃ何も照らせない。
傷だらけの心まで、届かない。