かわいい戦争






月が沈み、日が出てきた頃。

帰宅すると、お父さんが朝の仕込みをしていた。



「海鈴?今まで外出てたのか?」


「え、えっと、その……なんか目が覚めちゃって!それで……さ、散歩、してきたの」



朝の散歩気持ちよかったなぁ、とわざとらしく伸びをする。


なんとなくお父さんの顔が見れなくて、よそよそしくなってしまった。



「……そうか。海鈴は早起きだな」



下手な嘘に気づいてないのか、それともフリなのか、お父さんはさして態度を変えずに平然としてる。


疑わないんだ……。

ホッとしたけど、罪悪感で胸が痛む。



「そういえば、また出前の依頼が来てたぞ」


「え?出前?こんな朝早くに?」


「なんでもお昼に北校まで届けに来てほしいんだそうだ。でも無理だよな。海鈴も学校あるし」



届け先が学校?

嫌な予感しかしない。



「ち、ちなみに、その依頼人は……?」


「名前は確か……アマコって言ってたかな。注文だけして切られたんだ。あとで断りの電話いれないとな」



……予感、的中。


天兒さんめ。

絶対嫌がらせだ。


ニヤニヤしてる顔が頭に浮かんで、すぐかき消した。



「いいよ!その依頼、引き受ける!」


「え?いや、無理しなくていいんだぞ?海鈴は学校あるし、出前に行けないだろ」


「ううん、大丈夫!」



売られた喧嘩は買ってやる!

わたしなりに嫌がらせに対抗してやるもんね!!


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