かわいい戦争
◇
月が沈み、日が出てきた頃。
帰宅すると、お父さんが朝の仕込みをしていた。
「海鈴?今まで外出てたのか?」
「え、えっと、その……なんか目が覚めちゃって!それで……さ、散歩、してきたの」
朝の散歩気持ちよかったなぁ、とわざとらしく伸びをする。
なんとなくお父さんの顔が見れなくて、よそよそしくなってしまった。
「……そうか。海鈴は早起きだな」
下手な嘘に気づいてないのか、それともフリなのか、お父さんはさして態度を変えずに平然としてる。
疑わないんだ……。
ホッとしたけど、罪悪感で胸が痛む。
「そういえば、また出前の依頼が来てたぞ」
「え?出前?こんな朝早くに?」
「なんでもお昼に北校まで届けに来てほしいんだそうだ。でも無理だよな。海鈴も学校あるし」
届け先が学校?
嫌な予感しかしない。
「ち、ちなみに、その依頼人は……?」
「名前は確か……アマコって言ってたかな。注文だけして切られたんだ。あとで断りの電話いれないとな」
……予感、的中。
天兒さんめ。
絶対嫌がらせだ。
ニヤニヤしてる顔が頭に浮かんで、すぐかき消した。
「いいよ!その依頼、引き受ける!」
「え?いや、無理しなくていいんだぞ?海鈴は学校あるし、出前に行けないだろ」
「ううん、大丈夫!」
売られた喧嘩は買ってやる!
わたしなりに嫌がらせに対抗してやるもんね!!