かわいい戦争

一瞬目を瞠ったひつじくんは、どう返したらいいかわからず黙り込む。



「じゃあわたし着替えてくるね。ひつじくんは先にホール行ってて？」



返事を待たずに試着室に入った。



わたしの言葉のせいでいっぱい動揺させちゃった。


でも、ひつじくんは“かわいい”を必要としてるように思えてならないんだ。



だって、ほら。


「……すごく、かわいい」



ひつじくんが選んでくれたドレスを着たわたしが、鏡に映る。



色もデザインも、リタがライブの最後に着てたドレスとおんなじくらいかわいい。


コレを着たわたしも“かわいい”の魔法にかかりそう。



“かわいい”を好きでなきゃ

かわいいものを見つけられないよ。



これがわたしの勘違いじゃなければ、少しでもひつじくんの気持ちが晴れやかになってほしい。




ドレスに合わせ、マスクを取ったあと。


メイクとヘアスタイルを派手めに変えていく。


メイクは特に目元を強調。
唇はグロスで潤艶に光らせる。

髪の毛はコテでくるくる巻いて、輪郭をぼやかした。



「よし、完成！」



鏡越しに対面するわたしは、いつものわたしとは違う。


ちょっとやりすぎ感あるけど……まあいっか！



最後にファーショールを纏い、高めのヒールを履いて、試着室を出た。