かわいい戦争
怖がってた割にはあっという間に階段を下りられた。
未來くんの手が離れた途端、前方に転びそうになった。
「わわっ……!」
やばい!顔面から倒れちゃう!
反射的にぎゅっと瞼を瞑れば、想像よりも大分早く額に何かがぶつかった。
「い、いた……く、ない?」
というか、倒れてない?
斜めになってるだけ?
じゃあ額に当たってるのは何?
おもむろに顔を上げると、パーマがかった黒髪が真上で揺れていた。
「あ、あ、天兒さん……!?」
当たってたのは天兒さんの胸板だったのか!!
咄嗟に数歩退く。
こういうとき、ヒールでも関係なしに素早く動けるのはなぜなんだろう。危機察知能力が働いたのだろうか。
怖くて目が見れない。
と、とにかく謝らなきゃ!
「ぶ、ぶつかってすみま……」
「思ってたより似合ってねぇな」
「……はい?」
下げた頭に降ってきたのは、まさかの一言。
予想外すぎて、悲しむ余裕もなかった。
「髪とか巻きすぎじゃね?メデューサかよ」
髪に触れる太い指に、喉がヒュッと締まる。
油断したら殺られそう……!