かわいい戦争
「馬子にも衣装だな」
「利希サイテー。まじ最悪。女の子の敵~!」
「十分似合ってるじゃねぇか。逆にお前は何を期待してたんだ」
「何って、キャバ嬢だけど?それ以外何があんだよ」
「お前の中のキャバ嬢ってどんなんだよ」
「どんなって、んなの……」
「あー待て待て、言わなくていーから。怖くて聞けね~よ」
「キャバ嬢のイメージに怖いもクソもねぇだろーが。何言ってんだ」
カチンコチンに硬直するわたしの背後で、未來くんと勇祐くんが天兒さんと言い合ってる。
が、正直今のわたしには全く聞こえていない。
乱雑に髪が解放され、ようやくホッと肩を下ろした。
何度か心臓が止まったかと思った……。
そういえば、ひつじくんはどこにいるんだろう。
姿が見当たらないけど。
キョロキョロ見渡してみても、ホールのどこにもひつじくんはいない。
「ねぇ、ひつじくんはどこに……」
「あっ!」
いきなり勇祐くんが声を張り上げた。
「あー……ああっ、そう!車!」
「え?車?」
「そう、車!洋館前に車待たせてっから!」
「え、あの、それよりひつじくんは……」
「ほらほら!急いで!」
「え、ちょっ……!」
勇祐くんが慌ただしくわたしの背中を押すせいで、ひつじくんのことを聞くに聞けない。
なんで急に張り切り出したんだろう。