かわいい戦争



押されるがまま洋館の敷地を一歩出たら、強引な圧がなくなった。


振り向くと、3人が不気味にニヤリとしてる。



「!?」



何あれ、怖い。


天兒さんだけならまだしも、3人全員。

怪しい匂いがプンプンして、すぐさま正面に向き直した。



「……見なかったことにしよう」



そうしよう。
それがいい。


気持ちをリセットして歩き出す。



洋館前には1台の車が停まっていた。


高級そうな黒い車に近づくと、自然と扉が開いた。



これは「乗れ」って合図?



「お、お邪魔します……」



後部座席にそうっと乗り込めば、奥に誰かがいた。


金髪美女だ。

わたしと同様に、きらびやかなドレスで着飾ってる。


誰だろう。


とりあえず座席に座り、横目に隣の人を盗み見る。



…………

…………


…………ん?



も、もしかして。

いや、もしかしなくても、あれは絶対……



「ひ、ひつじ、くん……?」



だよね?



「……変?」


「えっ!?へ、変じゃないよ!?似合ってる!かわいい!」



そりゃもうとびっきりかわいい。

似合いすぎてる。


だってわたしよりも着こなしてるもん。


変じゃないから、ものすごく混乱してるんだ。


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