かわいい戦争
「いいね、青春だね~。やっぱ神雷はこうでなくっちゃ!」
突然、運転席から声がした。
車内には2人だけじゃなかったの!?
「あ、びっくりさせちゃった?」
運転席からひょっこり後ろを覗くのは、見知らぬ女性。
こ、今度こそ、誰!?
また誰かの女装!?
「カイリー、紹介する。こちら、成瀬 幸珀さん。運転を頼んだら、引き受けてくれたの」
「引き受けてよかったよ。ひつじの珍しい格好も見れたし、かわいい子にも会えたし」
1枚の名刺をもらった。
そこには『心理カウンセラー 成瀬幸珀』の文字。
カウンセラーの方がどうして運転手をしてくださるんだろう。
「どうもよろしくね、海鈴ちゃん」
「わ、わたしの名前……どうして……!?」
「さっきちょっと聞いたの」
「幸珀さんが、無理やり聞き出した」
「こらひつじ、誤解与えるような言い方すんな?いいか?初対面は第一印象が大事なの。わかる?」
車内が凍った。
こ、怖っ……!
天兒さんより怖いよ、この人!!
真っ黒な笑顔でひつじくんを威嚇してるよ!!
「……僕が、聞いてほしくて、話しました」
「うんうん、よろしい、それでいい」
満足げな成瀬さんに、ひつじくんは不服そうだけれど仕方なさそうでもある。
……は、初めて見た。
神雷と対等に話し、言い負かす女性を。
いや、対等というより成瀬さんのほうが上の立場に感じる。
年上だから?