かわいい戦争



「いいね、青春だね~。やっぱ神雷はこうでなくっちゃ!」



突然、運転席から声がした。


車内には2人だけじゃなかったの!?



「あ、びっくりさせちゃった?」



運転席からひょっこり後ろを覗くのは、見知らぬ女性。


こ、今度こそ、誰!?

また誰かの女装!?



「カイリー、紹介する。こちら、成瀬(なるせ) 幸珀(こはく)さん。運転を頼んだら、引き受けてくれたの」


「引き受けてよかったよ。ひつじの珍しい格好も見れたし、かわいい子にも会えたし」



1枚の名刺をもらった。

そこには『心理カウンセラー 成瀬幸珀』の文字。


カウンセラーの方がどうして運転手をしてくださるんだろう。




「どうもよろしくね、海鈴ちゃん」


「わ、わたしの名前……どうして……!?」


「さっきちょっと聞いたの」


「幸珀さんが、無理やり聞き出した」


「こらひつじ、誤解与えるような言い方すんな?いいか?初対面は第一印象が大事なの。わかる?」




車内が凍った。


こ、怖っ……!

天兒さんより怖いよ、この人!!


真っ黒な笑顔でひつじくんを威嚇してるよ!!



「……僕が、聞いてほしくて、話しました」


「うんうん、よろしい、それでいい」



満足げな成瀬さんに、ひつじくんは不服そうだけれど仕方なさそうでもある。



……は、初めて見た。

神雷と対等に話し、言い負かす女性(ヒト)を。


いや、対等というより成瀬さんのほうが上の立場に感じる。

年上だから?


< 154 / 356 >

この作品をシェア

pagetop