かわいい戦争
幸珀さんの雰囲気も、さっきの威圧感も。
既視感を覚えた。
それはきっと、神雷で漂うソレと同じだから。
「1年だけだったし、下っ端だったんだけどね」
「幸珀さんは、幹部クラスにならなかった、下っ端じゃないですか。なろうと思えば、なれたんじゃ?」
「うーん、どうだろ。わたしリーダーとか向いてないし、面倒だし、他に適任者がいたしね」
「でも、今でも幸珀さんの最強伝説、語り継がれてますよ」
「最強伝説ぅ~?何それ、そんなのあるの?ウケる」
「首長に喧嘩売ったとか、総長を泣かせたとか、スリッパで殺したことがあるとか。他にも、いろいろ」
「あははっ!身に覚えしかない!」
え、今なんて?
身に覚えしかない?
嘘でしょ。
最強伝説って全部事実なの!?
聞きたいけど、詳しく聞くのが恐ろしい……。
「懐かしい……けど、それは伝説であって、過去のこと。今神雷を背負ってるのは、あんたたちでしょ?新しい伝説を作って、上書きしてよ」
「僕たちが、伝説……?」
「うん、伝説。あんたたちなら作れるよ。多分」
「多分って、曖昧。無責任」
「曖昧を本物にするのがあんたたちの仕事でしょ。頑張りな」
「……はい」
「これも伝説のひとつになるかもしれない。もし本当にそうなったら面白いね。その協力ができるのが嬉しいよ。昔に戻った感じがする」