かわいい戦争
幹部の1人として戦う、男の子のひつじくんも。
かわいい服を着た、女の子らしいひつじくんも。
どんな姿をして、どんな思いをしていたって、強さも優しさも変わらない。
ひつじくんは、ひつじくんでしょ?
「……カイリーの、おかげだよ」
「え?」
「考えが変わって、ここにいるのは」
俯きながらも視線だけがこちらを捕まえる。
自然と上目遣いになった瞳は、夕焼けの濃い光だけを集めたみたいに眩かった。
「カイリーが、“かわいい”を、許してくれたから」
『かわいくなって、いいんだよ』
あの一言で、あの一瞬で。
ひつじくんは“かわいい”に触れた。
勇気の要ることだっただろうに。
それでもわたしの自己満足のために、変わってくれた。
「僕、津上病院の、跡取り息子で」
「……へ?」
急に話が変わった?
……わけでは、ない?
どっちにしろ、え、何?跡取り息子?
津上病院っていったら、この街で一番大きな総合病院だ。
そこの跡取り息子……えええ!?
勇祐くんは学校の理事長の孫で、ひつじくんは病院の跡継ぎ!?
神雷のスペックどうなってるの……。