かわいい戦争
しがない理想
繁華街でそこそこ名の知れたキャバクラ。
外装から既に豪華で妖しい雰囲気が漏れ出ている。
車を出て思わずごくりと生唾を飲んだ。
こ、ここに、今から潜入するのか……。
神雷以上に別世界すぎて、ちょっと緊張。
ううん、ちょっとどころじゃない。
通行人の視線も相まって、ものすごく緊張する。
「カイリー、心の準備は、いい?」
隣のひつじくんの問いかけに、ハッとする。
同時に、手の温もりにも気づいた。
あ、わたし、まだ
ひつじくんと手を握ったままだったんだ。
「うん、大丈夫」
強く握り返し、どちらともなく手を離した。
1人じゃなくてよかった。
ひつじくんと一緒なら、怖くない。
緊張はどうしてもしちゃうけど。
「僕に、従って。潜入捜査は、慣れてるから」
「わ、わかった!」
「まずは、裏口に行く。カイリーは、僕の前にいて。僕が気配を消しながら、カイリーを案内する」
け、気配を、消す?
よくわからないけど、従うしかない。
もう一度「わかった」と返事をすると、早速ひつじくんはわたしの両肩を掴み、自分の前に立たせた。