かわいい戦争

しがない理想





繁華街でそこそこ名の知れたキャバクラ。


外装から既に豪華で妖しい雰囲気が漏れ出ている。



車を出て思わずごくりと生唾を飲んだ。



こ、ここに、今から潜入するのか……。

神雷以上に別世界すぎて、ちょっと緊張。


ううん、ちょっとどころじゃない。



通行人の視線も相まって、ものすごく緊張する。




「カイリー、心の準備は、いい?」



隣のひつじくんの問いかけに、ハッとする。


同時に、手の温もりにも気づいた。



あ、わたし、まだ

ひつじくんと手を握ったままだったんだ。



「うん、大丈夫」



強く握り返し、どちらともなく手を離した。


1人じゃなくてよかった。

ひつじくんと一緒なら、怖くない。


緊張はどうしてもしちゃうけど。



「僕に、従って。潜入捜査は、慣れてるから」


「わ、わかった!」


「まずは、裏口に行く。カイリーは、僕の前にいて。僕が気配を消しながら、カイリーを案内する」



け、気配を、消す?

よくわからないけど、従うしかない。


もう一度「わかった」と返事をすると、早速ひつじくんはわたしの両肩を掴み、自分の前に立たせた。


< 163 / 356 >

この作品をシェア

pagetop