かわいい戦争
「そう緊張しないで。僕はここで楽しくお喋りをして、仕事の疲れを取りたいだけだから!」
「今日もお仕事お疲れ様です。朝から働いてお疲れでしょう?ほら、グラスももう空っぽ」
「あ、ほんとだ。おかわり頼んでもいいかい?」
リンカさんが水滴を拭いたグラスを、わたしに渡された。
お、おかわり!?
わたしが作るの!?
ひつじくんをチラ見して助けを乞えば、黙って大きく頷かれた。
……わたしがやるしかないのね。
落ち着け、わたし。
頑張るって決めたんだ。
震える手でグラスを受け取り、テーブル上にあるボトルを持つ。
ボトルの中身はウイスキーだろうがワインだろうが、この際関係ない。
とりあえずゆっくり入れてみよう。
ゆっくり……ゆっくり……。
「あ、待って」
「えっ?……っあああ!」
リンカさんの制止に気を取られ、注ごうとしたお酒が全てグラスの外側に流れてしまった。
テーブルの表面を伝ったお酒は、リンカさんのドレスに滴る。
「す、すみません!!」
せっかくのドレスを汚しちゃった……!
「べ、弁償しま……」
「いいのよ、気にしないで」
「でも……!」
「失敗は誰にでもあるわ」
ポン、と肩を軽く叩かれた。